トランプ支持か否か 弾劾裁判で共和党が内紛状態に
◆有罪票を投じた共和党員に「問責決議」
共和党上院議員のリーダーであるマコネル氏は党全体の意見をまとめたかったに違いないが、1月6日のトランプ前大統領の言動を目の当たりにし、そしてその後自らが暴徒により身の危険にさらされたことで、トランプ氏の責任に関しては共和党員のなかでも意見が分かれている。下院では10人、そして上院では7人の共和党員が有罪票を投じたが、その議員たちが選出州の共和党や、場合によっては家族からも裏切り者扱いをされているという。
NBCニュースによると、かねてからトランプ前大統領を批判していたイリノイ州選出のアダム・キンジンガー下院議員(共和党)は、弾劾裁判でトランプ氏有罪の票を投じたことが原因で親族11人が署名した非難の手紙を受け取ったという。そのなかには、「あなたは私たち(家族)、そして神にとって何という失望だろう!」「キリスト教の原理に背き、悪魔の軍隊に仲間入りしている」「あなたはキンジンガー一族の名前を辱めた」などと書かれていた。このような文章を読むと、トランプ支持者とそうでない人々の溝はかなり深いことを思い知らされる。同記事によると、キンジンガー氏は共和党から「トランピズム(トランプ主義)」を追放することを目指しており、最近「カントリー・ファースト(国家第一)」という政治活動委員会を立ち上げている。同氏は共和党を「トランプの党」から、レーガン大統領やブッシュ大統領など伝統的な保守党に戻そうとしているという。
トランプ氏に有罪票を投じた共和党議員たちは党の圧力に屈せず、アメリカ憲法と自分たちの良心に従って判断を下したようだが、地元州で問責決議に直面している。CNNによると、前出のキンジンガー氏のほかに下院ではワイオミング州選出のリズ・チェイニー下院議員、上院ではルイジアナ州選出のビル・キャシディ上院議員、ノースカロライナ州選出のリチャード・バー上院議員がすでに問責決議を受けたほか、ネブラスカ州選出のベン・サス上院議員、ペンシルバニア州選出のパット・トゥーミー上院議員などもそれぞれの州で同決議に直面しているという。このうちトゥーミー氏とバー氏は議員引退を表明しており、バー氏の議席にトランプ氏次男エリック氏の妻であるララ・トランプ氏が立候補するのではないかと予測されている。
一方、ニューズウィーク誌(電子版)によると、ユタ州選出の元大統領候補で、反トランプ派の代表ともいえるミット・ロムニー上院議員は「ユタ州の共和党員のなかでも意見は多様化しており、かえって『意見の一致』に固執するのは危険である」という理由で同州共和党のサポートを受けており、問責決議の危険はないという。
民主党議員は反トランプで足並みが揃っている一方で、共和党議員はトランプ氏を党から追放するか、それともこのままトランプ氏支持を続けていくかで意見が分かれ、内紛状態にあるようだ。ツイッターも取り上げられ、最近はほとんどメディアにも取り上げられないことから、トランプ氏の影響は薄れてきているものの、共和党支持者のなかでは同氏の人気は依然として高い。この分裂状態が悪化すれば、今後どちらかの党派が脱党して新党を結成する可能性も捨てきれないだろう。
【関連記事】
米議会襲撃、内部協力者の疑い 周到な計画の可能性
「トランプ2024」はある? 再出馬が噂される理由
米議会占拠事件で問われる、メディアと民主主義のあり方
- 1
- 2