トランプ氏、支持者に「2度投票」勧める 郵便投票後に投票所でも
11月3日の米大統領選まで2ヶ月を切り、アメリカのニュースメディアは連日トランプ大統領とバイデン前副大統領の話題で賑わっている……と言うよりも、トランプ氏の連日の言動やあちらこちらから漏れ出してくるスキャンダルで、状況はこれまでの大統領選とは比較にならないほど混沌としてきている。
トランプ氏は8月24日から27日まで行われた共和党大会で、これまでの慣習を破り(公務員の政治活動を規制するハッチ法違反という説もある)、ホワイトハウスから70分間におよぶ長い演説を展開。これまでバイデン氏に遅れをとっていた世論調査で巻き返しを期待したようだが、政治情報サイト『リアルクリアポリティクス』によると、各社の世論調査ではいまのところとくに大きな変化は表れておらず、相変わらずバイデン氏が6~10%程度のリードを保っていることから、どうやら肩透かしに終わった感が強い。
そんな情勢のなかで、トランプ氏は郵便投票が不正選挙につながると連日ツイッターでアピールしたり、郵便公社への資金投入に反対したりして今回の大統領選をかく乱するような言動を見せてきたが、共和党大会後すぐに再開した選挙集会で、支持者に向かって「2度投票する」という不正を勧める事態に発展した。
◆「郵便投票は不正」トランプ氏の主張
NBCニュースによると、トランプ氏は9月2日、ノースカロライナ州で行った選挙集会で集まった支持者に対し「(有権者に)郵便投票を送らせて、そして(投票所でも)投票させてみよう。もしこの(郵便投票の)システムがそんなによいと言うなら(2度目の)投票はできないだろう。もし(郵便投票が)カウントされていないなら投票できるはずだ」と発言した。もちろん、ノースカロライナ州だけでなくアメリカ全土で投票を2度することは違法である。
現在劣勢に立たされているトランプ氏は、郵便投票を不正だと主張することで、バイデン前副大統領への票が増えないように仕向けている可能性も高い。しかし、トランプ氏が「郵便投票をするな」と主張することで、結果的に同氏自身の票も少なくしてしまう恐れがある。新型コロナウイルス感染拡大の懸念が高いいまの情勢ならなおさら、投票所で直接投票したくない人が増えるのは無理もないだろう。CNNによると、共和党の世論調査員がある激戦州で調査したところ、調査対象のうち郵便投票でトランプ氏に投票しようとしている人は全体の15%しかおらず、75%はバイデン氏に投票するつもりだと回答したという。トランプ氏が郵便投票を阻止しようと躍起になっていることから、自然な成り行きで同氏支持者は郵便投票をせず、当日投票所に行けない場合は投票自体をしない可能性も出てくる。
トランプ氏に投票する有権者は当然、米議会や州議会、州知事選挙でも共和党寄りに投票すると思われるため、不利になるのはトランプ氏だけではなく共和党候補者全員であるとも言えよう。同記事によると、元ペンシルバニア州知事で共和党員のトム・リッジ氏は、郵便投票を妨げることは「共和党にとって大変危険なことで、信じがたい不利益となる」と述べている。
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