トランプ陣営の気になる動き、抱える爆弾……混迷の2020年米大統領選
◆新型コロナウイルスとワクチン接種開始
今回の大統領選で、トランプ氏最大の弱点となっているのが新型コロナウイルスへの対応だ。ジョンズ・ホプキンス大学の統計によると、日本時間の7日午後3時の時点で、同国の累計感染者数は627万6835人、累計死者数は18万8941人となっている。
新型コロナウイルスに対するトランプ政権の対応が後手に回ったことは、これまでのトランプ氏の数々の発言から見て取れる。そのため、感染者や死者の増加だけでなく、失業者数の大幅な増加や米GDPの悪化などさまざまな経済的影響が発生している。これまで好調な経済がトランプ氏の最大の自慢だったこともあり、選挙への影響は大きいと思われる。
CBSニュースによると、米疾病管理センター(CDC)は8月27日、各州に11月1日までに新型コロナウイルスのワクチン接種開始準備をするよう推奨した。その日付が選挙の2日前であることを考慮すると、何が何でも大統領選前にワクチン接種を開始したい、というトランプ政権の思惑が見え隠れする。
◆「10月サプライズ」の可能性も
これまでジョセフ(ジョー)・バイデン副大統領は「セクハラ」で批判されたことはあるが、それ以外の大きなスキャンダルは出ていない。90年代に同氏のオフィスで勤務していた女性に性的暴行の疑いをかけられたこともあったが、その女性に偽証の過去があったことが判明すると疑いは立ち消えた。
また、ニューヨーク・タイムズなどのメディアに、バイデン氏の息子であるハンター・バイデン氏が中国の企業と関連していることが取り沙汰されている。ハンター氏はこれまでもウクライナ企業との関連があることが明かされているが、トランプ一族がいまもアメリカを含む世界中でビジネスを経営していることを考えると、これが大きな攻撃材料となるかどうかには疑問が残るうえ、トランプ氏自身の墓穴を掘ることにもなりかねない。
現在、トランプ陣営はバイデン氏に対する大がかりな攻撃をしていないが、今後選挙情勢の逆転を測り、選挙直前の10月にもバイデン氏に関するスキャンダル暴露などの攻撃材料を準備している可能性もある。
今回の米大統領選は、現時点においてはバイデン前副大統領が依然として優勢を保っている。バイデン氏の人柄や熱意、これまでの政治経験、多くの実績を考慮に入れると、どちらがアメリカの大統領として相応しいかに議論の余地はない。しかし、アメリカにはトランプ氏の熱狂的支持者が通常の一般常識では考えられないほど多数存在していることも確かであることや、ロシアによる選挙妨害が今回も起こっていることを考えると、2016年の二の舞になる可能性もある。2020年大統領選は、今後のアメリカの進路や国としての命運をかけた激しい戦いになりそうだ。