トランプ陣営の気になる動き、抱える爆弾……混迷の2020年米大統領選

Joe Cavaretta / South Florida Sun-Sentinel via AP

◆トランプ氏の郵便投票妨害
 現在まで世論調査ではバイデン氏にリードを許しているトランプ氏は、大統領選に相当な危機感を感じているらしく、最近では選挙妨害とも受け取れる行動が目立っている。政治情報サイト『ポリティコ』によると、トランプ氏はFOXニュースのインタビューで郵便投票阻止のために郵便公社に資金投入をしないことを主張。またトランプ氏の大口献金者であるルイス・デジョイ氏を郵便公社長官に指名。デジョイ氏は就任後、事業改革と称して郵便選別機や郵便ポストの撤去などを行い、現在各地で郵便配達に遅れが出るなど運営に支障が出始めている。CNNによると、同氏は現在米下院の監視・政府改革委員会に召喚されているが、今後トランプ氏の狙い通りに郵便投票用紙の配達などに支障が出ることが懸念されている。

 また、バイデン氏が僅差で勝利した場合、トランプ氏が郵便投票の有効性について疑問を呈し、結果に異議を唱える状況にもなりかねない。トランプ氏が本当に郵便投票が不正選挙の温床になると信じているかどうかは不明だが、バイデン氏が勝利した際(のみ)に選挙結果を疑問視するための準備をしている可能性も否定できない。

◆トランプ暴露本出版の影響
 トランプ氏と同氏政権に関する暴露本は2017年の大統領就任後から多く出版されてきたが、大統領選前になった最近はとくに暴露本の出版が相次いでいる。7月以降、同氏の姪であるメアリー・トランプ氏や、メラニア夫人の親友でありアドバイザーでもあったステファニー・ウィンストン・ウィルコフ氏の著書が出版されたが、トランプ氏にとって一番ダメージが大きいと思われるのが、9月8日に出版が予定されている同氏の元弁護士で、金銭的な問題や人間関係を操作する役割を果たし「フィクサー」と呼ばれていたマイケル・コーエン氏の暴露本だ。内容についてはまだ公表されていないが、トランプ政権関係者が戦々恐々としていることは間違いないだろう。その日になったら、トランプ氏がまた問題発言をして人々の気を逸らそうとする可能性もある。

 しかし、トランプ氏はこれまでビジネス関連の訴訟や女性関係、ロシア疑惑、法律違反など数々のスキャンダルを乗り越えてきている。と言うよりスキャンダルが多すぎて、どれもすぐに過去のことになってしまううえに、上院の過半数を占める共和党勢力にすべて黙認されている状態だ。またトランプ氏には右派の熱狂的支持者が多く、同氏が何をしてもあまり気にしていない様子がうかがえるため、暴露本の内容がどのようなものであれ同氏支持者の意思に影響を及ぼすかどうかは定かでない。

Text by 川島 実佳