トランプ陣営の気になる動き、抱える爆弾……混迷の2020年米大統領選
11月3日の大統領選まであと2ヶ月に迫ったアメリカでは、民主・共和両党の党大会も終わり、いよいよ選挙戦が本格化してきた。政治情報サイト『リアルクリアポリティクス』によると、9月2日に公表された各社の最新世論調査では相変わらずバイデン副大統領が下は4ポイントから上は11ポイントまで、調査会社ごとに多少の差こそあるが確固たるリードを保っている(うち、4ポイントとしたラスムッセン・リポートは共和党寄りと言われる)。しかし、今後情勢が逆転する可能性もあり、バイデン氏が安全圏にいるとはもちろん言えない。
現在のアメリカの社会・政治情勢と、今後11月までに起こり得る出来事を考慮に入れ、2020年の米大統領選がどのような動きを見せるか検証したい。
◆黒人差別抗議デモと右翼民兵の衝突
現在、アメリカで大きな問題となっているのが、全米各地で起こっている抗議デモや暴動、そしてそれに対するトランプ政権の対応だ。最近抗議デモや暴動が起こったウィスコンシン州とオレゴン州はともに民主党州知事が率いる州である。西部オレゴン州はワシントン州、カリフォルニア州とともに歴史的に民主党支持が圧倒的に強い州で、抗議デモが大統領選に及ぼす影響は強くないと言えるが、激戦州である中西部ウィスコンシン州は前回僅差でトランプ氏が勝利した州である。トランプ氏は同州をはじめ、ミシガン州、ミネソタ州など激戦州で暴動が発生した状況を政治目的に利用。現在自分自身がすでに大統領であるにもかかわらず、共和党大会でも民主党とバイデン氏を批判し、「私が大統領になれば安全だ」と主張したうえ、ウィスコンシン州で抗議デモ参加者2人を射殺した17歳の右翼少年を擁護する発言もした。
しかしバイデン氏はトランプ氏の主張に真っ向から反撃。CBSニュースによると、8月31日にペンシルバニア州ピッツバーグを訪れたバイデン氏は、暴動や略奪行為は「抗議デモではない」と主張し、「ドナルド・トランプが再選されたら、アメリカで暴力が減少すると信じている人などいるのか」「私は安全なアメリカを欲している。新型コロナウイルスからの安全、犯罪と略奪からの安全、人種的闘争からの安全、悪徳警官からの安全。私は完璧にクリアにしておきたいが、今後4年間のドナルド・トランプ(が大統領になること)からの安全もだ」と述べた。
メディアでは現在も毎日のようにニューヨーク州ロチェスターやカリフォルニア州ロサンゼルスなどで起こった黒人男性に対する警官の暴力事件について報道されているが、トランプ大統領の政治的利用意図を警戒してか、現在のところそれに伴う抗議デモや暴動などは起こっていない。