人命より経済を優先? トランプ政権、復活祭までの経済再開をプッシュ

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◆テキサス州副知事「経済のためなら高齢者は犠牲に」
 共和党員のなかにはトランプ氏と同じ意見を持つ人もいるようだ。NBCニュース(電子版)の報道によると、テキサス州のダン・パトリック副知事(共和)はFOXニュースのトークショーに出演し、「我々70歳以上の人々は自分で自分の世話をし、国を犠牲にすることはしない」と発言。自分の命を新型コロナウイルスの危険にさらすことと「私たちの子供や孫のために愛するアメリカを維持する」ことのどちらかを選ぶなら、前者の危険を選ぶと述べた。

 もちろん、パトリック副知事の発言は、新型コロナウイルスで最も命が危険にさらされているのが高齢者であることを踏まえての発言だ。つまり、同副知事の発言は「アメリカの生活を守るためなら高齢者の命を犠牲にしてもいい」という意味であろう。

 しかし、アメリカにおける新型コロナウイルス政策を指南する国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長はホワイトハウスでの記者会見で、トランプ大統領の発言に水を差すように、復活祭までには外出禁止令を解除するというトランプ氏の目標について「フレキシブルにならなければならない。日付を決めるのはいいが、日ごと、または週ごとにフレキシブルに対処すべきだ」と述べた(ザ・ヒル)。

 ファウチ所長がはっきりと「無理」と言わないのは、トランプ大統領の顔を立てるためだろう。感染者数がうなぎ上りに増加し、事態の収束が見えないいまのアメリカ。いくらトランプ大統領や共和党員が望んでも、感染者数世界一のこの国が2週間後に通常の経済活動を取り戻すというのは奇跡が起きない限り不可能に近い。

Text by 川島 実佳