人命より経済を優先? トランプ政権、復活祭までの経済再開をプッシュ

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 新型コロナウイルスが猛威を振るうアメリカ。ジョンズ・ホプキンス大学の新型コロナウイル・リソースセンターによると、同国内における感染者数は世界最多の16万4610人(日本時間31日午後2時時点)と、その数は日ごとに急速な増加を見せておりまだまだ収束しそうにない。数週間前までは「事態はコントロールされている」と言って完全に事態を甘く見ていたトランプ大統領もさすがに事の重大さに気づいたのか、13日に国家非常事態宣言を出した。
 
 しかし、これまで長期間好況を続けてきたアメリカ経済を売りにしてきたトランプ大統領は、11月の米大統領選が近づいていることもあり、国と経済が閉鎖状態にあることに焦りを感じ始めてきたらしい。同大統領は23日、アメリカ経済を「復活祭(今年は4月12日)までには再開したい」と発言した。
 
◆「復活祭までにアメリカを通常に戻したい」トランプ氏
 CBSニュース(電子版)の報道によると、トランプ氏は23日の新型コロナウイルスに関するブリーフィングで、「アメリカは(経済的な)閉鎖に対応できる国として作られていない」「すぐに通常の状態に戻る必要がある」と発言し、なるべく早く経済を元の状態に戻したい意向を強く示した。

 経済を元の状態に戻すということは、現在アメリカの多くの州で行われている「自宅待機、自宅勤務(stay at home, work from home)」命令を終了し、人々が普段の経済生活を再開することを意味すると思われる。それはビジネスが通常の取引を開始することだけではなく、人々が以前のようにレストランに行ったり、映画を観に出かけたり、旅行をしたりということも含まれているのだろう。アメリカが新型コロナウイルス感染者数世界1位という現状を見れば、これは外出禁止令下で家にいれば助かったかもしれない人々を危険にさらすことも意味している。

 前出のCBSニュースの報道によると、トランプ大統領はインフルエンザが大流行してもアメリカの経済活動を停止させたことはなかったと述べ、新型コロナウイルス感染拡大よりも経済衰退のほうが恐ろしいと主張している。

Text by 川島 実佳