「最悪の時」に新型肺炎、安倍政権最大の危機
◆増税でGDP大幅減 コロナでさらに打撃
フォーリン・ポリシー誌に寄稿したライターのウィリアム・スポサト氏は、新型コロナのアウトブレイクは、安倍政権にとって最悪の時期に訪れたと述べている。中国の習近平主席の訪日は延期となり、この夏の東京五輪開催も微妙な状況だ。中野氏とは異なり、新型コロナへの対応の良し悪しは判断できないと同氏は述べる。それでも日本経済が犠牲になることは間違いないとする。
そもそも感染が拡大する前から、日本の2019年10~12月のGDPは年率換算で6.3%減となり、景気後退に向かっていた。消費税増税の影響と見られ、これに新型コロナが追い打ちをかけるのは明らかだ。感染のクラスターを作らないよう、人の集まるところは避けるよう推奨され、さまざまな催しがキャンセルされ、企業の在宅勤務も増えている。経済への影響は高まり、株価は大幅下落、ホテルもレストランも集客に苦しんでいる。中国、韓国からの観光客が来なくなったインバウンド観光は最大の敗者となりそうだと同氏は指摘している。
◆支持率も下落、支持層にも亀裂が
安倍首相の人気も下り坂だとスポサト氏は指摘し、すでにたくさんのスキャンダルで打撃を受けているが、支持率はこの2年間で最低レベルだと述べる。共同ニュースの2月15日から16日の世論調査の結果を紹介し、支持率は1月から8.3ポイントも低下して41%となり、82.5%の回答者が新型コロナの経済への影響を懸念すると答えている。
安倍首相の総裁任期は2021年9月までで、スポサト氏は政権がレイムダック化する可能性もあるとしている。ルール変更で任期延長という話も出ていたが、これだけ問題が積もったため、その話は消えたということだ。最後のチャンスはトランプ大統領再選で、扱いに慣れた安倍首相しかトランプ氏に対応できないと評価されれば、続投の可能性があると見ている。
一方ブルームバーグは、安倍政権は弱い野党のおかげで続いてきたが、経済とオリンピックの共倒れを無視するわけにはいかないため、これ以上状況が悪化すれば、自民党が早々に安倍首相を切る可能性もあると述べる。安倍首相の支持が低下するなか、政権から距離を置いてきた石破茂氏が次の総裁として有利になりそうだとし、今回ばかりは安倍政権が危機を乗り越えるのは難しいと見ている。
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