新型肺炎:渡航制限、隔離措置はやりすぎ? 米政府の対応に賛否
◆後手に回るよりはいい、強い姿勢に支持
一方、政府の措置を称賛する意見も多い。カリフォルニア大学ロサンゼルス校のロバート・キム-ファーレイ教授は、隔離でパニックが起こらないことは望むが、十分に警戒することに越したことはなく、政府は力強い対応をしていると述べている(ガーディアン紙)。ジョージ・W・ブッシュ政権のバイオディフェンス・コンサルタントだったケネス・バーナード氏は、渡航制限や隔離が好きな人などいないが、ウイルスに感染して死ぬのはだれでも嫌だろうとし、感染力の強いウイルスであることを踏まえ、政府のアクションは適切だと見ている(米公共ラジオ網NPR)。
今回のような措置には、必ず人権侵害の問題がついて回るが、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、今回の政策が「恐怖と汚名を誘発する」可能性は認識しているが、公衆衛生上の利益はマイナス面を上回ると主張している。CDCの国立予防接種・呼吸器疾患センターのナンシー・メッソニエ氏は、控えめよりむしろ過剰に対応したと記憶されるほうがいいとさえ述べている(ポリティコ)。
ミシガン大学のハワード・マーケル氏は、メッソニエ氏の発言を称賛し、アメリカの隔離措置は最適とは言えないが、中国が武漢などで行った封鎖に比べれば、より人道的かつ思慮のあるものだと述べている(同上)。
◆中国は不満、今後の国際協力に暗雲
アメリカの措置に対し、中国は「不適切な過剰反応」だと大反発している。いまのところ重大な問題と多くの専門家が見ているのが、中国からの入国禁止や渡航規制が中国政府を孤立させ、新型ウイルスへの対応における協力が困難になることだ。NPRは、渡航規制により、中国との間の重要な人材や物資の移動が困難になる可能性も指摘している。
CDCは、世界保健機構(WHO)の武漢への代表団派遣への参加に関し、中国の許可を待っているところだが、こちらにも影響が出そうだとポリティコは見ている。前出のベラ議員は、中国と敵対的な関係になるのではなく協力し合うべきだと述べ、渡航制限もすでにほかの国にウイルスが広がっている以上、もう意味をなさないだろうと述べる。現時点でウイルス封じ込めは大変困難であり、最優先課題は疫学専門家を中国に送り、パンデミックの原因を調査することだと述べている。
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