「米国民ですか?」国勢調査に質問を入れようとしたトランプ氏 最高裁が却下
◆最高裁が政権の主張を却下した理由
アメリカでは国勢調査は商務省が行う。2018年4月4日付の政治・社会情報サイト『ThinkProgress』の報道によると、2020年の同調査に前述の質問を記載したことで、同省は全米18州と6都市、そして全米市長会に訴えられた。米公共ラジオ放送NPR(電子版、6月27日付)によると、この裁判では同日、最高裁が市民権に関する質問記載を却下。NBCニュース(6月27日付)によると、最高裁は却下の理由として、商務省はこの質問を国勢調査に掲載する権利はあるが、これまでの国勢調査には含まれていなかった市民権に関する質問を導入する正当な理由に欠けるとした。
最高裁のジョン・ロバーツ首席判事はまた、トランプ政権がこの質問を記載したい理由が「不自然である」として、変更を加えるための正当さに欠けると指摘。最高裁で政権側が主張した理由は表面的なもので、この質問を入れたい理由がほかにあるとロバーツ首席判事が疑っていることをうかがわせた。
◆市民権の質問を記載したい思惑とは
政治専門紙ザ・ヒル(電子版、6月27日付)によると、トランプ政権がこの質問を入れようとした表向きの理由は、「投票権法の強化のため」というものだった。しかし、7月5日付のハフポストによると、トランプ大統領は記者陣に国勢調査の質問について尋ねられ、口が滑ったのか「まず、(市民権に関する質問は)議会のために必要だ。議会は(この質問を使って)選挙区決定のために必要としている」「(市民権に関する質問は)予算案にも必要だ。どこに予算が行っているのか? 住民が何人いるのか? 住民はアメリカ国民なのか? アメリカ国民でないのか? (市民権に関する)質問は多くの理由で必要なのだ」と裁判で弁護団が主張したこととは別の理由を述べた。
国勢調査に市民権に関する質問を記載すれば、当然アメリカ国民でない人々やおもに民主党員など反トランプ派は質問や国勢調査自体をボイコットする結果となり、人口統計を取るという国勢調査の目的が果たせなくなる。しかしハフポストの記事によると、そうやって質問や国勢調査自体をボイコットする人が出ることによって選挙区を改正することができ、それが結果として「共和党員と非ヒスパニック系白人にとって有利となる」と考えているという。
これはトランプ大統領が述べた前述のコメントと重なる部分がある。本当のところ、トランプ政権は選挙で共和党と白人の有利を図るために市民権に関する質問記載を狙っていたとみて良さそうだ。それを最高裁のロバーツ首席判事に見透かされ、結果として却下されたのである。
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