イヴァンカを甘く見るな? 冷笑のなかを猛進するトランプ愛娘

Susan Walsh / AP Photo

◆もはや政権幹部? 政治家面に要人イライラ
イヴァンカ氏は、G20では海外勢との2国間会議に出席し、その後トランプ大統領の北朝鮮電撃訪問という歴史的イベントにも同行している。CNNは、アジアを旅するイヴァンカ氏は、影の国務長官の役割を演じようとしていたと述べる。イヴァンカ氏の現在の地位は上院で信任されてもいないとし、これではまるでファミリービジネスだとしている。

 場違い感を如実に表したのが、フランスのマクロン大統領、イギリスのメイ首相、IMF(国際通貨基金)のラガルド専務理事、カナダのトルドー首相の会話に割り込んできたイヴァンカ氏を捕らえた映像だ。フランス政府が公開したこの動画のなかで、要人たちはイヴァンカ氏の口出しに耐えていたが、ラガルド専務理事だけは気持ちを隠しきれず、口をゆがめて横目で明らかな軽蔑のまなざしを数度イヴァンカ氏に向けていた。

 ガーディアン紙のムーア氏は、選挙で選ばれたわけでもないのにアメリカ大統領の娘というだけでそこにいるイヴァンカ氏を、だれもどう扱っていいかわからないと述べる。世界のリーダーたちは、集合写真の真ん中に陣取るイヴァンカ氏に違和感を覚えるだろうが、これを許したという点では彼らも共犯者だと断じている。

◆実は政治家向き? トランプ氏も太鼓判
 ワシントン・ポスト紙(WP)は、多くの人々がイヴァンカ補佐官はトランプ氏と共演するサイコドラマの一部に過ぎないと見ているとする。しかし違う見方もあるとし、イヴァンカ氏は将来的に大統領選に出馬するのではないかと述べている。実際のところ、トランプ氏は子供たちのなかでもっともイヴァンカ氏に目をかけており、もし彼女が大統領選に出馬すればとても手ごわい候補になると述べている。トランプ家関係の著述を持つ人々も、いつかイヴァンカ氏が大統領選に出るだろうと語っている。

 イヴァンカ氏自身は失敗をしないよう足を踏み込みすぎないことに気をつけており、世界銀行総裁にというトランプ氏の求めも断ったということだ。また、常に女性の社会進出を支持し、この分野では屁理屈のつけようはない。G20では冷たくあしらわれたが、その足で父親とともに北朝鮮を訪問し、非武装地帯での会議に出席した。少しだけだが北朝鮮にも足を踏み入れ、韓国では米軍兵に声をかけるなど、政権スタッフとしてその存在感を強めている(WP)。

 WPは、彼女は猛追型で冷淡な扱いや嘲笑、失敗にも鈍感だと述べ、こういった資質はすべて大統領選には役立つと述べる。トランプの娘と笑うのは簡単だが、イヴァンカ氏の野心は、まじめに受け止めたほうが良いとしている。

Text by 山川 真智子