「コミュ力が低い」EU離脱混迷、批判の矛先はメイ首相にも

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◆性格が災い? コミュ力の低さが批判の的に
 必ず民意を反映させブレグジットを成功させると約束したメイ首相だが、実際は大混乱に陥っており、その手腕には大きな批判が集まっている。ローンズリー氏は、メイ首相の硬直した性格が失敗をもたらしたと見る。高いレベルのコミュニケーション力が求められる首相の仕事には、不器用、シャイ、内向的は、深刻な短所だとしている。

 英タイムズ紙のコラムニスト、ジェニー・ラッセル氏も、メイ首相の性格が問題だとする。相手の望みや考えに注意を払わず、交渉とは何かがわかっていないし、妥協も嫌いで自分と意見の合わない仲間は次々と排除し、夫や信頼できる数人の仲間とで秘密裡に物事を決めてしまう、とメイ首相を批判。政治における、同盟、友情、協力、相互理解などを発展させる能力に乏しいことがブレグジットを軌道から外し、現在の混乱を作ったとしている(ニューヨーク・タイムズ紙、以下NYT)。

◆選挙も不要だった 失敗続きで窮地に
 2017年に総選挙を行ったことも、メイ首相の大失敗だといわれている。改選前は保守党は単独過半数を握っていたが、離脱交渉のため議会の基盤を強化しようと選挙を決めた。結果として過半数が取れず、国民からのそれまでの信頼も失った。メイ首相は野党のリーダーに歩み寄ることもできたが、代わりに北アイルランドの保守政党、民主統一党や、保守党内の離脱強硬派の人質に自らなってしまったとローンズリー氏は述べている。

 もう一つの誤判断は、大詰めでの振る舞いだとローンズリー氏。メイ首相の離脱案は議会での評判が悪く、国家としての立場からも魅力のないものだったが、メイ首相はごり押ししようとした。このやり方がだめとわかった時点で、別の戦略や選択肢もあったはずだとして、不動の目的は政治家の美徳となりえるが、柔軟性がなければ長続きしないと指摘している。

 ラッセル氏は、英国国教会の牧師の娘であるメイ首相は、使命を果たすことが何よりも大切と教育されていたと述べる。首相という大役を引き受けたのも、メイ首相にとって保守党が人生の中心であったためだとメイ首相の同僚は語っている。党の目的、規則、伝統やコミュニティを守るため、離脱を率いるもっとも厳しい時期に、国益よりも党内融和を優先させたことが失敗だったとラッセル氏は見ている(NYT)。

◆誰がやっても困難 ブレグジットは続く
 ラッセル氏はメイ首相の降板は遅かれ早かれ決定的だとし、英史上最悪のリーダーとして記憶されるだろうと述べる。一方、ローンズリー氏は、メイ首相が適役ではなかったことは認めているが、ブレグジットという複雑な仕事をうまくやり遂げられる政治家などいないのではないかと述べる。これまでの混乱はすべてメイ首相のせいだと言うのは簡単だが実際はそうではないとし、保守党が抱える問題はメイ首相ではなく党そのものであり、ブレグジットの問題はメイ首相ではなくブレグジットそのものだと述べている。

Text by 山川 真智子