外国人労働者拡大「日本にはそれしかない」「欧州から学べ」 海外識者からの声
◆成功はやり方次第 突貫工事は禁物
もっとも、日本政府の新方針には課題も山積みだと海外識者は指摘する。津田塾大学のクリス・バージェス教授は、世論が納得していないこと、政府が具体的な中身を示していないこと、受け入れ側のサポートシステムが整っていないことなどの問題点を上げる。外国人を社会に貢献する定住者として受け入れず、日本人がやらない労働をさせるだけの存在として見るなら、日本は人口も経済も縮小し続けるだろうと厳しい意見だ(イーストアジアフォーラム)。
Schwarcz氏は、東京五輪を目前にし、安倍政権は人手不足解消のために大急ぎなのだろうと事情を推測する。だが、外国人労働者受け入れが成功するかどうかはそのやり方にかかっているとし、日系人労働者や技能実習生受け入れで浮き彫りとなった問題への対処法が示されないまま本格的な受け入れが始まることに懸念を示す。
◆ネガティブばかりではない 欧州から学べ
バージェス教授は、日本はこれまで「移民なしの原則」を貫いてきており、大量の外国人受け入れが社会の団結を乱し安全を損なうという国民の認識がほとんど変わっていないとも述べている(イーストアジアフォーラム)。移民受け入れを恐れる日本人が多いことは確かだろう。しかし、欧州外交評議会のウェブサイトに寄稿した独立系コンサルタントのイリナ・アンジェレスク氏は以下のような教訓を欧州から学べと訴える。
教訓1:移民受け入れによって、高齢化と人口減少の問題を緩和することができる。西欧諸国では日本同様出生率が低下しているが、移民を受け入れたことにより、今世紀中は今の人口規模を維持できる。
教訓2:移民により、欧州は競争力と経済成長を改善させた。金融問題、移民危機などにもかかわらず、ユーロ圏は2015年以来成長を続けており、意欲的な移民の貢献が大きい。
教訓3:前述の2つの教訓は、適切な政策によって初めて持続可能になる。移民を受け入れ側の社会に溶け込ませるため、政府は受け入れについての活発な国民的議論を奨励すべきで、就職、住宅購入、言語習得なども補助し、帰化が自然な結果となるようにすべき。
同氏は、欧州のやり方が決してパーフェクトではないと認める。だが、移民の流入が欧州の社会不安やポピュリズムの台頭を招いたと見る日本人に対し、欧州を移民政策のネガティブな結果と見るのではなく、その先にあるものを見るべきだと訴えている。
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