玉城デニー沖縄知事インタビュー 訪米控え、基地問題と自身のアイデンティティ語る

GAP Photo / Koji Sasahara

 日米の文化を併せ持ち、沖縄県知事に就任したばかりの玉城デニー氏が訪米の準備を進めている。アメリカ国民に向けて「論争が続く県内の米軍基地建設を中止し、代わりに平和を構築してほしい」というメッセージを伝えたい意図があるのだという。

 玉城氏は、在日海兵隊の普天間基地閉鎖と沖縄にある米軍基地削減を公約とする選挙運動を展開し、10月4日に沖縄県知事就任を果たした。この小さな島には日本にいる在日米軍人の54,000名の半数近くが駐留しており、全国で軍基地として使用される土地の64%を沖縄が占めている。

 玉城氏は知事として初めて11日に渡米し、ニューヨークとワシントンを訪れる予定だ。

 10月31日、玉城氏は沖縄県の東京事務所でAP通信のインタビューに応じ、「私はこの問題を解決するため、何があったのか、何が起きているのか、そして今後何があるのか、ということをアメリカの人々に理解してもらいたい」と話している。

 59歳の玉城氏は、アメリカ人を親に持つ初の沖縄県知事であり、日米両文化をルーツに持つ自分こそ、アメリカ国民にメッセージを伝えるのにふさわしいと強調した。

 父親は海兵隊員で、玉城氏自身は一度も会ったことはないという。その後、母親は沖縄の地で彼を育て上げた。父からの手紙や写真は、母がすべて焼却してしまったのだと玉城氏は振り返る。

 それでも、アメリカにいる父に会いたい、そして抱きしめたい、と彼は言い添えた。

「お父さん、元気でしたか?と声をかけたい」と彼は英語と日本語で言い、100人くらい名乗り出てきてしまうかもしれないけれど、と冗談を交えた。

 ドナルド・トランプ大統領の政策スタンス全般については、自分自身の見解がまとまっていないことを認めた。今回の訪米で大統領との面会は予定されていない。

 トランプ大統領はアジアとの貿易に対して否定的な見方をしているようだが、今年初めに金正恩氏と首脳会談を行うなど、北朝鮮と和解する動きを見せており、トランプ氏がこの地域の平和を追求していることの表れではないか、と玉城氏はいう。

 玉城氏はシーサーや南国風のファブリックで飾られたオフィスにて、トランプ大統領と沖縄にとって「ウィンウィンの状況にしたいと思っています」と気さくにリラックスした様子で語った。

 玉城氏は2009年に国会議員として政界進出を果たす以前、ラジオ番組のパーソナリティを務めていた。彼は第二次世界大戦敗戦後に交わされた日米安全保障条約を支持し、日本が自衛のための軍隊を保有することにも反対していないと話している。

 しかし、日本人は安全保障問題や国防費、そして米軍基地を抱える沖縄に過度の負担がかかっていることについてしっかり理解し、議論を深める必要がある、と彼は言い加えた。

 沖縄県民の要望と、アメリカ側の全般的な米軍海兵隊移転計画が一体となって協調していく必要がある、と玉城氏はいう。

 論争の中心となっているのは、米軍飛行場を人口密集地域の普天間から、東海岸に位置し比較的人口の少ない辺野古へと移す、いわゆる普天間基地移設問題だ。辺野古での初期工事には着手しているものの、完成には程遠い。アメリカと日本の政府は移設を支持しており、沖縄県は建設承認許可を撤回するなど法的措置を講じているが、国の省庁はこれを無効としている。

「沖縄の人々は、もう20年以上も新基地建設に反対している。民主的なプロセスが無視されているのだから、辺野古への移設には根本的な誤りがある。日本政府は、辺野古が唯一の解決策であると主張し続けるのではなく、アメリカ政府に対してそうした見解を強く主張するべきだと考えている」と玉城氏は話している。

 これまで、沖縄からの訴えは日本の主要メディアや一般市民を含め、世界の多くから見過ごされることが多かった。しかし玉城氏の登場により、沖縄が抱える歴史的なジレンマに注目が集まっている。

 1952年に日本が主権を回復し、1972年に正式返還されてからも、米軍は沖縄に駐留し続けた。また、沖縄は第二次世界大戦中、最大規模の地上戦が繰り広げられた地でもある。

 戦後、米軍兵士によるひき逃げや婦女暴行といった犯罪が横行し、沖縄の人々は怒りに燃えた。辺野古移設問題も、3人のアメリカ兵による女子児童への暴行事件が発端となっている。それ以外にも、騒音公害や軍用機にまつわる事故の危険性が叫ばれており、市民は憤りを感じている。

 玉城氏は、沖縄の文化や歴史、県民の声のために立ち上がったと話している。また、多様性が未来のビジョンであり、財産でもある沖縄では、自身のようなアメリカ人と日本人の混血が珍しくないと指摘する。

「私のような者がたくさんいる」と彼は言い、「平和で豊かで、優しい社会を作りたい」と続けた。

「沖縄の人々には分かち合いの精神があり、それが私のアイデンティティの大切な要素になっている」

 玉城氏は、日本の一部である沖縄は自ら国家政策を立てることはできず、日本政府とアメリカに対して声をあげることしかできないと繰り返し強調した。ただ、日本の首相になる気はあるか、と尋ねられた際には、「もしも国民がそう望むのなら」と躊躇なく同意した。

 当初、自身が政治家になるなど想像もしていなかったという。

 県知事就任後、何か自身に変化があったかと尋ねられると、玉城氏は答えを思索した。

 玉城氏は今もバンドを続けており、主にロックを歌い、ギターを奏でているという。また、エリック・クラプトンへの愛は変わっていない、というから、それほど変化はないのかもしれない。しかし、新たな役割を得たことによって、おそらく以前より忍耐強くなっているだろう。

「少しは成長できたかもしれない」と微笑みながら語った。

By MARI YAMAGUCHI and YURI KAGEYAMA, Associated Press
Translated by isshi via Conyac

Text by AP