報じられたトランプ政権の「トランスジェンダー排除」 噴出する怒りの声

AP Photo / Carolyn Kaster

 10月22日、トランプ政権がトランスジェンダーのアメリカ人に対し、これまでの連邦政府の認識と市民権の擁護を真っ向から否定することになる新しい性別の定義を導入しようとしているという報告がアメリカ中を駆け巡り、全国のLGBTのリーダーたちが一斉に怒りの声を上げた。

 ナショナル・センター・フォー・トランスジェンダー・ライツの代表、マーラ・キースリング氏は、十数名の活動家の指導者たちが開催した記者会見で「我々は非常に脅かされていると感じる。しかし、あくまで毅然とした態度で臨む」と語り、「我々は立ち上がる。常に立ち直る。そして我々は現政権が崩壊してごみの山と化した後もずっとここにいる」と宣言した。

 その後、活動家の指導者たちは「#Won’tBeErased」と書かれたポスターに囲まれ、ホワイトハウスの外で抗議集会を開いて演説を行った。

                                                                                                                 

 10月21日、ニューヨークタイムズ紙は、アメリカ合衆国保健福祉省が「人の性別は誕生時に持って生まれた生殖器官によって決定される、不変の生物学的な状態として定義されるべきである」とする提案についての覚書を回覧していたと報じた。タイムズ紙は、回覧された覚書について、この提案では、人は必ず男性か女性のどちらかに定義されることになり、性別に関する論争が起きた場合は、遺伝子検査を実施して決着をつけることになると説明した。

 LGBTの権利を擁護する指導者たちは、これをトランスジェンダーのアメリカ人が政権から受ける最新の攻撃ととらえている。政府はトランスジェンダーの人々が兵役に就くことを禁止しようとしており、さらにアメリカ合衆国司法長官のジェフ・セッションズ氏のメモによると「トランスジェンダーの人々は市民権法によって就労の差別から保護されなくなる、と政府は結論を下している」という。

 活動の指導者たちは、トランスジェンダーの生徒に自らが選んだ性のトイレの利用を認めるように発令されたオバマ政権時代の指導を撤回したとして、トランプ政権を非難した。

 トランプ大統領は、ホワイトハウスを発ってヒューストンへ遊説に向かう時に最近の論争について簡潔に触れたが、トランプ政権がこの覚書に従った政策を推し進めるかどうかは依然不透明なままだ。

 トランプ大統領は、「現時点で、多数の異なる考え方がある。トランスジェンダーに関しても、実に多くの様々な事が起きている。それは私同様に皆さんも良くご存じのことだろう。我々はこの状況を注意深く見守っている」と話した。

 そしてトランプ大統領は、「私は、全国民を保護する」と言い足した。

 閣僚関係者は数ヶ月前、「性別の自認」に基づく医療における差別を禁止する連邦法の改訂に向けて取り組んでいたことを認めていた。そして、当初の規則は、「性別の自認に基づく差別は市民権法が禁止する性差別の一形態であると、度を超えて性急に結論付けていた」とするテキサス州の連邦裁判官の意見を引用した。

 当局は10月22日、「漏えいしたと思しき文書」に関してはコメントしないと述べた。公民権局長のロジャー・セベリーノ氏は声明を発表し、当局は、テキサス州を拠点とするリード・チャールズ・オコナー裁判官が2016年に下した判例に準拠した上で案件を審理していると述べた。

 LGBTの活動家たちは、報じられた覚書が公式の政策になるのであれば法的な異議申し立てを行うことを誓い、他のいくつかの裁判所はオコナー裁判官とは正反対の判決を下していると語った。

 ラムダリーガルの訴訟管理官であるダイアナ・フリン氏は、「何年もの間、全国の裁判所は、トランスジェンダーであることを理由として人を差別することは性差別の一形態であると認識し、これを完全になくそうとしてきた。もし、現トランプ政権が時計を巻き戻し、法的にも科学的にも根拠がなく、とうてい支持することのできない独自の性別の定義を振りかざそうとするのであれば、我々はあらゆる困難も辞することなく立ち向かっていく」と述べた。

 全国レズビアン権利センター(NCLR)のトランスジェンダー弁護士であるシャノン・ミンター氏は、11月6日のアメリカ中間選挙の前に報じられたこの政策案を「いたずらに意見の対立を招き、右翼勢力を活性化させようとする政治的な策略だ」と痛烈に批判した。

 オバマ政権下でアメリカ合衆国保健福祉省の公民権オフィスを運営していたUCLAの法律学者であるジョセリン・サミュエルズ氏は、トランプ政権が覚書に記された政策を採択するとなれば、既に制定されている法律の一線を越えることになると語る。

 サミュエルズ氏は、「彼らの言葉に従えば、人は自分で性別を決定できないということになる。人の性別を決めるのは政府だということになる」と述べた。

 ラムダリーガルの弁護士、オマール・ゴンザレス=パガン氏は、提案された性別定義の規則の変更は、依然としてホワイトハウスで審理中のようだと話した。審理の認可には、市民権の施行にも携わることになる司法、労働、および、教育に関わる部門の署名が必要となる。

 ゴンザレス=パガン氏は、「この規則変更の狙いは、トランスジェンダーの人々の存在を抹消し、連邦法から彼らに関する記述を削除し、そして、判例法、医学的・科学的な解釈、さらにトランスジェンダーの人々の実体験のいずれにも反する新しい定義を制定することだ」と語った。

 社会的な慣習に関する討論が行われる一方で、医学や科学の専門家たちは長い間、人の出生時に割り当てられた性別と自己が意識する性が異なることで生じる不快感や苦痛を抱く「性同一性障害」という状態の存在を認識している。性同一性障害が重度の場合、深刻なうつ病を起こす可能性も指摘されている。その治療は、髪型や衣装を工夫して外見を変え、自認する性別に合わせることから外科的な性別適合手術やホルモン投与に至るまで多岐にわたる。

 UCLA法科大学院のウィリアムズ・インスティテュートの推測によると、アメリカ国内にはおよそ140万人のトランスジェンダーの成人がいるとされている。

By DAVID CRARY and RICARDO ALONSO-ZALDIVAR, Associated Press
Translated by ka28310 via Conyac

Text by AP

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