ドイツで徴兵制復活議論に火 極右政党の台頭と人手不足 世論は賛成

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 ドイツはメルケル政権下で、2011年に徴兵制を停止したが、今これを復活すべきという議論に与党キリスト教民主同盟が火をつけた。これまで政府は、「軍隊はプロに任せる」という方針を示してきた。突然の徴兵制復活議論には、台頭する極右政党の影響があると見られている。

◆メルケル首相の後継者、徴兵制議論を受けて立つ
 徴兵制が停止されるまでは、すべての男性は軍でのトレーニングを受けるか、緊急事態管理や医療といった民間分野での代替役務に就くことが義務だった。現在では、若者のための短期の有給役務はオプションとして残るものの、職業軍人と長期契約隊員が、軍の主な構成要員となっている。

 メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)の有力議員、ヘニング・オッテ氏が、「古くさい徴兵制は今の安全保障上の助けにはならない」と述べるように、政府は職業軍人による軍隊を支持している(ドイチェ・ヴェレ、以下DW)。ところが最近になって、メルケル首相の後継者と言われるCDUのアンネグレート・クランプ=カレンバウアー幹事長が、徴兵制復活の話を持ち出し、その可能性についての「非常に激しい」議論を受け入れると発言した(英テレグラフ紙)。

 同氏は、必ずしも徴兵制復活に賛成な訳ではないとしながらも、「さまざまな方法がある」と述べた。一方政権の報道官は、徴兵制回帰は論外と明確に否定しているという(同上)。

Text by 山川 真智子