次にトランプ政権を去るのは? 止まらない幹部の辞任・解雇劇

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 7月5日、トランプ政権発足時から米環境保護局(EPA)の長官を務めていたスコット・プルイット氏が辞任した。同氏は在職中、旅費や警護費に無駄な公費を使ったほか、米政治情報サイト『VOX』によると、公費4万3,000ドルを使い自分のオフィスに違法な「防音電話ブース」を設置するなど、次から次へとスキャンダルを起こし問題となった人物である。

 プルイット氏は「辞任」したことになっているが、米政治専門紙ザ・ヒル(電子版)によると、どうやらついにトランプ大統領に愛想をつかされたというのが本当のところらしい。ジョン・ケリー大統領主席補佐官が、同大統領の「辞任して欲しい」というメッセージをプルイット氏に届けたという。つまり、事実上解雇されたわけである。

 スキャンダルまみれで人事の入れ替わりが激しいトランプ政権には、他にも「辞任は時間の問題」と囁かれる人物が何人かいる。その顔ぶれと理由を見てみよう。

◆キルステン・ニールセン国土安全保障長官
 トランプ大統領による「ノー・トレランス(不寛容)」政策の徹底を実行に移したのは米国土安全保障省のキルステン・ニールセン長官である。この政策により、多くの不法移民とその子どもたちが引き離され、子どもたちがまるで檻のような「収容所」に送られるという異常事態が発生し、全世界が衝撃を受けた。

 先月19日のニューズウィーク(電子版)の報道によると、民主党のメイジー・ヒロノ上院議員(ハワイ州選出)は、ホワイトハウスが「このような政策を実施していない」と堂々と嘘をついたことでニールセン長官に辞任を求めたという。

 またテッド・リュー上院議員(カリフォルニア州選出)も、ツイッターで繰り返し同長官の辞任を求める投稿をしている。

 ニールセン長官は国民による抗議行動の標的ともなっている。6月20日のCNNの報道によると、ワシントンD.C.のレストランで「恥を知れ」「家族引き離し政策をやめろ」と抗議を受けた。その後自宅外でも抗議行動が行われ、同長官に辞任を求める声は高まっている。

◆ジョン・ケリー大統領主席補佐官
 トランプ政権の中では「まとも」な人物であるといわれるジョン・ケリー大統領主席補佐官は、公的にはトランプ大統領をかばう発言をよくしているものの、現実的には同大統領とのトラブルが絶えないらしい。

 ニュースサイト『AXIOS』は4月7日、ケリー氏がトランプ氏と口論になり、補佐官職を辞任すると脅し、ニールセン国土安全保障長官になだめられたと報道。またケリー氏が辞任を口にしたのはこの時ばかりではないと記述している。

 トランプ氏が反発してケリー氏を解雇するのが先か、またはケリー氏が業を煮やして辞任するのが先か。FOXニュースは5月3日、トランプ氏がケリー氏辞任(または解雇)後、自身の選挙陣営で顧問を務めたコリー・レワンドウスキー氏の主席補佐官就任を希望していると報道。しかし、ニュースサイト『TheWrap』によると、その後レワンドウスキー氏はテレビで身体障がいを持つ女児に対する不適切発言をして炎上、評判をさらに落とした。7月半ば現在、ケリー氏はまだ大統領首席補佐官として在職している。

◆サラ・ハッカビー・サンダース報道官
 CBSニュースは6月13日、ホワイトハウス内部筋の話として、トランプ政権の報道官を務めるサラ・ハッカビー・サンダース氏が年末までに政権から辞任することを考慮していると報道。しかし翌14日、サンダース報道官はこの報道を否定し、辞任の意思はないと述べた。

 サンダース報道官はホワイトハウスの顔として、日々トランプ大統領の言動を弁護する役目を果たしているため、記者や民主党議員の多くに「嘘つき」呼ばわりされている。またCNNの報道によると、同報道官が「トランプ政権で働いているから」とバージニア州のレストランから食事中に追い出される事件が発生。同報道官への心理的プレッシャーは日々高まっている。

「回転ドア」と呼ばれるほど人事の移り変わりが激しいトランプ政権。今年11月の中間選挙前、また複数の人事異動が起こる可能性もある。

Text by 川島 実佳