将来の世界的指導者を教育する米国 国益はいかに

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著:Nathan Urbanピッツバーグ大学、Vice Provost for Graduate Studies and Strategic Initiatives)、Ariel C. Armonyピッツバーグ大学、Vice Provost for Global Affairs)

 米国の大学への留学生数が減少している。このような時によく議論されることは、各大学やその地域社会に及ぼす経済的な影響についてである。

 世界情勢や国際教育専門にしている我々は、これをより深刻な脅威だと考えている。つまり、世界的な将来の指導者たちを形成し、彼らに影響を与えることを可能にする米国の力が低下しているということではないのか。

                                                                                                                 

 米国に対する個々のスタンスはこの国との個人的な関わりによって形成される、ということが研究によって明らかにされてきた。大学コミュニティの一員になることは、留学生にとって、米国の多様な人々や文化、地域に触れることが出来る、明確で意義深い経験となる。

 米国の政策や価値観が、国境を越えて人々の目に正当だと映る場合、国家の「ソフト・パワー」、つまり軍事力や強制力を使うことなく、他国からの信頼性を得られる能力は高まる

◆世界的指導者、米国の卒業生たち
 現在、海外留学中であるすべての大学生、大学院生の内、およそ20%が米国で学んでいる

 この留学生たちの中から世界的指導者が輩出されてきた、という長きにわたる伝統がある。近年では、国連事務総長を務めたコフィー・アナンパン・ギムンがその代表である。

 2001年に、国際連合と共にノーベル平和賞を受賞したアナンは、マカレスター大学に留学していた経験を転機であったと述べた。「私がここで得た価値観と知識は、生涯を通してずっと私自身と共にあるものです」。今年、彼にちなんで名付けられたグローバル・シチズンシップ(地球市民)研究所が設立され、そのために母校を訪れたアナンはこのように述べた

 米国は今でもなお、世界中で最も優秀な学生たちを惹きつける羨望の的の存在であり、彼らに米国の文化や価値観を開いている。米国の大学は世界ランキングの上位を占め、この地位を継続させることが、米国の政策立案者にとって最優先事項であるべきだと考える。政治学者であるジョセフ・ナイが「ソフト・パワー」について論じてきたように、「他者の好みを方向づける力」は、国際政治において最も価値のあるものである。

◆求められるソフト・パワー
 ソフト・パワーとは、他国から「価値観を高く評価され、手本として模倣され、そしてその繁栄と寛容性の水準を目指す」対象とされる国の能力である。個人的な経験の積み重ねで築かれた米国に対する理解は、親米的な価値観を形成するためには不可欠である。彼らはまた世界各国で、民主主義的価値や個人の権利を推進していく際に、重要な役割を担う。

 例えば、パキスタンのベナジル・ブット元首相は、イスラム諸国家において、民主的に選出された政府を率いた最初の女性である。ブットはハーバード大学で学んだ。「若い学生たちが刑務所に送られることなく、大統領を批判できるような自由がある」国へ来たことで、自身の民主主義体制に対する信念に火がついた、と述べたことがある。

 米国で教育を受けた指導者たちは政治分野に限ったことではない。企業経営者たちもまた、米国で教育を受け、米国の文化である起業家精神やイノベーション、社会奉仕の経験を直に積んできた。

 例として、インドで最大かつ最も影響力のある企業のCEO、ラタン・タタはコーネル大学で学んだ。タタは米国に対して相当な新規投資を行ってきた。自動車メーカーのジャガーやランドローバーなど、有名ブランドを買収、再建することで欧米市場へ参入し、会社を拡大してきた。

 タタトラスト社の会長によると、タタはビル&メリンダ・ゲイツ財団と協力し、公衆衛生問題の改善に努めている。企業のある地域社会の持続可能性に根差した慈善事業への、戦略的な取り組みを重視している。

 我々が勤務するピッツバーグ大学は、韓国の近代指導者たちの教育に貢献してきた。韓国は米国にとって、東アジアにおける最も重要な戦略的かつ経済的提携国の一つである。

◆共有の利益
 1967年、若き外交官であったクォン・ビョンホンは、世界情勢を学ぶためにピッツバーグ大学へ入学した。クォンは後に、韓国と中国間の外交関係を築くため、第一線の交渉者となった。また、韓国の海外国際協力機関設立時には、重要な役割を担った。これらは双方とも、地政学的および、米国の国益を伴う共通の開発目標を提携することで、米国の安全性を高めることに貢献する結果となった。

 1971年にピッツバーグ大学で教育学の博士号を取得したリー・サンジュは、韓国野球委員会を創立したことで「韓国野球の父」として知られている。韓国の野球ファン数百万人がKBOリーグをテレビ観戦している時、奥深い部分で米国と繋がっている。娯楽を共有することで繋がりをもつことは単純なことに見えるかもしれないが、共有の文化的言語を築く能力は計り知れない。

 要するに、米国の大学へ入学する留学生数の減少による影響は、経済的なものだけでは終わらないということだ。米国の精神を経験したことのある将来の世界的指導者が、ますます少なくなっていくということである。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Mana Ishizuki

The Conversation

Text by The Conversation

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