ストローなど使い捨てプラスチック製品、使用禁止 欧州委が提案

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 プラスチックの発明により私たちの生活は便利になったが、海洋にあふれ出たプラスチック製品による環境汚染が世界的な問題となっている。欧州でも海やビーチを汚すプラスチックごみの量は増え続けており、欧州委員会は、市場における使い捨てプラスチック製品の利用を禁じる新EUルールを提案し、導入を急いでいる。

◆リサイクルわずか ほとんどがごみに
 プラスチックが発明されたのは19世紀末で、生産が本格化したのは1950年ごろだという。これまで83億トンが作られ、そのうち62億トン以上がごみになっているが、57億トンはリサイクルされずじまいとだという科学者の研究結果を、ナショナル・ジオグラフィックは紹介している。

 実際のところ、どれだけのプラスチックごみが海に出ているのかは分からないと同誌はいうが、ジョージア大学のジェンナ・ジャムベック教授は、沿岸地域だけで年間480万トンから1270万トンと推定している。そのほとんどは、陸地や川で捨てられた後、風や水の力で海に流れ着いたものだという。プラスチックがその構成分子にまで生物分解されるまでの時間は少なくとも450年、またはそれ以上かかっても無理とされている。

◆健康被害を懸念。欧州が対策に乗り出す
 欧州委員会は、世界の海洋ごみの85%はプラスチックで、欧州でも70%を占めていると述べる。ナショナル・ジオグラフィックによれば、プラスチックごみが絡んだりすることで、年間数百万の海洋生物の命が失われている。また、海を漂流するプラスチックは、波や太陽の光で砕かれマイクロプラスチックとよばれる小さなプラスチックのかけらとなり、海岸に流れ着き砂浜に紛れ込んだり、海洋生物に食べられたりする。さらに、マイクロプラスチックはナノプラスチックという目に見えないレベルの大きさに分解される。これらが空気、水、食べ物を通じて人体に入り込み、健康被害を与えることを欧州委員会は懸念。対策に乗り出そうとしている。

 EUではすでに2015年からビニール袋の削減に取り組み成功を収めているが、新たに10品目の使い捨てプラスチック製品の使用禁止を目指している。規制の対象となるのは、すでに代替品のある、綿棒の軸、ナイフやフォーク、ストロー、飲み物のマドラー、風船に取り付ける棒などだ。飲料の使い捨て容器に関しては、キャップやふたが容器に取り付けられ外せないものだけを許可するとしている。

 加盟各国は、削減目標を掲げる、販売時に代替品が利用できるようにする、または使い捨てプラスチック製品を無料で提供しないなどに努め、プラスチック製容器やカップの使用を削減しなければならない。市場に出回るものに関しては、デポジットによる返金制度などを利用し、2025年までに使い捨て飲料ボトルの90%の回収が義務づけられる。

 インデペンデント紙によれば、今回の提案は、中国がEUからの資源ごみの一部受け入れを取りやめたことも影響しているという。欧州委員会のティメルマンス第1副委員長は、1年以内の実施を目指すとしている。

◆途上国のほうが深刻 ごみ回収システムの整備が急務
 インデペンデント紙によれば、プラスチックの生産は1960年代の20倍にもなっており、欧州委員会の関係者は、プラスチック汚染を止めるには、生産を減らすしかないと述べる。もっとも、近年使い捨てプラスチック容器の使用が最も伸びているのは、経済成長が著しいアジア諸国で、処置を誤った世界のプラスチックごみの半分は、中国、インドネシア、フィリピン、ベトナム、スリランカの5ヶ国から出ていると指摘されている。ミシガン州立大学のラマニ・ナラヤン教授は、たとえ北米と欧州で100%をリサイクルしたとしても、これらの国を何とかしなければ、プラスチックの海洋汚染は解決しないとしている(ナショナル・ジオグラフィック)。

 プリマス大学のリチャード・トンプソン教授は、真の解決法は、まずプラスチックを海に出さないことだと述べる。途上国ではごみ回収システムが整備されていないところも多く、短期的に結果を出すには、ごみ定期回収に力をいれ、リサイクルだけでなく、埋め立て、焼却などでごみの拡散を防ぐしかないとしている。資源エコノミストのテッド・シーグラー氏も同様の考えで、まずプラスチック用樹脂の製造に課税し、それを元手に途上国のごみ回収システムの整備を進めるべきだと提案している(ナショナル・ジオグラフィック)。

Text by 山川 真智子