騙された英外相、偽アルメニア首相と電話会談 ロシア政府が関与か

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 イギリスのボリス・ジョンソン外相が、アルメニア首相のふりをしたロシア人に騙され、約18分間偽の電話会談を行うという事件が起きた。電話の音声は24日にユーチューブで公開されている。イギリス外務省は、ジョンソン外相が電話で話した事実を認め、「子供じみた行為」だと非難した。

◆暴露された動画の内容は? 犯人は常習犯
 ジョンソン外相は、アルメニアのパシニャン首相のふりをしたロシア人との電話で、最近イギリスで元ロシア人スパイが毒殺未遂の被害に遭った事件やロシアへの対応などについて話し合った。犯人は、各国の要人を相手にこうしたいたずらを繰り返していることで有名なロシア人の2人組、ボヴァンとレクサスとされている。2人は以前にも、ウクライナのポロシェンコ大統領のふりをしてトルコのエルドアン大統領と電話をしたと報じられている。

                                                                                                                 

 イギリス外務省は、ジョンソン外相は「悪ふざけであることに気付いて電話を終わらせた」と説明している。実際の音声を聞いても、ジョンソン外相は最初普通に話していたが、開始から約18分に突然電話を切った。

 しかし、途中までは疑いを持っていなかったように聞こえる。偽のアルメニア首相が、ロシアのプーチン大統領と近々会談することに関して「(元スパイ毒殺に使われたとされている神経剤)ノビチョクを使って彼(プーチン大統領)が私に毒を盛らないことを願っている」と話した後、ジョンソン外相は笑い声をあげている。その後会談についてアドバイスを求められた際には、「ロシア人が反応するのは意思の強さと断固とした態度だけだ」と答えている。

◆ロシア政府が関与している? イギリスで強まる疑念
 イギリスで起きたロシア人元スパイの毒殺未遂事件は、ロシアとイギリスの間の外交問題となっている。イギリスのメディアはこぞって、今回の偽電話事件は「ロシアが面子を保つために行った必死の試み」だとする外交筋の話を引用しており、ロシア政府がからんでいるとの見方が強い。

 ロシアが自国にとって悪いニュースを隠すために24日を選んで動画を公開したのではないかとの見方を示すメディアもある。スカイニューステレグラフ紙(24日)は、ウクライナ東部で2014年に起きたマレーシア航空機撃墜事件で使用されたミサイルがロシア軍のものだったとの調査結果が発表されたのと同じ日だと指摘した。元スパイ毒殺未遂事件で、元スパイとともに被害を受けた娘のインタビューが公開された日の翌日でもある。

 タイムズ紙(24日)は、ボヴァンとレクサスはロシアの安全保障・諜報機関とつながりがあることを否定しているが、「電話の内容と外国の要人にアクセスできる能力は、彼らの立場に関する疑惑を強めている」と指摘した。

◆外交トップがなぜ騙された? 偽電話の原因究明へ
 民間人がなぜイギリスの外交トップに電話をかけることができたのかについては、ロシア当局の関与を疑う見方があるが、犯人のボヴァンとレクサス自身はそうした関与を否定している。

 タイムズ紙がインタビューを行ったところ、2人はジョンソン外相に電話をかけた経緯について、まず英外務省のダンカン欧州米州担当大臣とコンタクトを取ったと話した。そしてダンカン氏が外務省経由でジョンソン外相との電話をセッティングしたという。

 英首相府は、「こうした事態は起きてはならなかった」とし、どのようにしてジョンソン外相とコンタクトを取ったのか調査をすると発表した。

Text by 後藤万里

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