日本は社会主義嫌い? マルクス生誕200年、変わる世界の社会主義への認識

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◆社会主義は中国に根付く? ただ実態は異なる
 マルクス生誕200年を前に、世論調査会社イプソスは、世界28ヶ国、2万人を対象に「21世紀における社会主義の理想に対する考え」を問う調査を行っている。「現在、社会の進歩にとって社会主義の理想は大いに価値がある」という考えに賛成するとした人が最も多かったのは、中国(84%)だった。ロイターによれば、「中国共産党はその社会主義のルーツを忘れてはならない」と習近平主席は説き、マルクス生誕200年に際し、政府は特に若者にその偉大さを教えるプロパガンダを発信している。

 しかし、実際の中国は、派手な消費から社会格差まで、あらゆる現代資本主義社会の特徴を見せているとロイターは述べる。党のレトリックと実際の中国社会の間の明らかな矛盾は、党がもはやマルクス主義に動機づけられているのではなく、実際的で経済的な関心に何よりも重きを置いていることを示唆するものだとしている。

◆広がる格差を認識も、日本は社会主義嫌い?
 イプソスの調査結果は、日本にとって大変興味深いものとなった。前出の「現在、社会の進歩にとって社会主義の理想は大いに価値がある」という考えに最も賛同しなかったのは日本(21%)で、アメリカ(39%)、フランス(28%)よりも低かった。

「私の国では、貧しい人を支えるために、裕福な人ほど多く税金を支払うべきだ」という問いに対しては、最も賛成が多かったのはスペイン(87%)で、セルビアと中国が86%でそれに続いた。平均は78%だったが、日本は70%しか賛成せず、南アフリカ(58%)、ブラジル(66%)、アメリカ(67%)に次ぎ、ポーランドとともに下から4番目となった。

 さらに「私の国では、教育は無料であるべきだ」「私の国では、無料の医療サービスは人間としての権利だ」「私の国では、すべての住人が無条件のベーシックインカムへの権利を持つべきだ」という社会主義の理想に対して、賛成の平均はそれぞれ89%、87%、69%だったが、日本はそれぞれ64%、47%、38%で、ダントツの最下位だった。

 欧米では2008年の世界経済危機以後、社会主義が可能性を秘めた政治システムとして徐々に人気になっている。日本でも格差が広がり、教育・医療・年金制度の崩壊が危惧されているが、一般に社会主義の理想は受け入れられにくいことが、今回の調査で明らかになった。やはり「自己責任」を重んじる人が多いということだろうか。社会主義ブームの嵐が日本で吹き荒れることはしばらくなさそうだ。

Text by 山川 真智子