習近平氏、“終身国家主席”へ布石 「毛沢東の失敗」を危惧する声

Ng Han Guan / AP Photo

 中国の国営ニュースは、執政党の共産党が国家主席の任期を撤廃する憲法改正案を提出したと発表した。これは、共産党トップの習近平氏が2023年以降も国家主席として在任するための地盤づくりだとみられる。

 新華社通信が2月25日に発表したところによると、共産党中央委員会が「中華人民共和国国家主席、副主席は(中略)連続して二期を超えることはできない」という憲法条文を削除する案を提出したという。

 香港中文大学の政治アナリスト、ウィリー・ラム氏は中国共産主義の生みの親を引き合いに出し、「習近平氏はついに自身が政治家になって以来の最終目標を達成した。それは、21世紀の毛沢東になる、というものだ」と述べた。

                                                                                                                 

 64歳の習氏は昨年、5年に一度開催される党大会で新たに5年間党代表(2期目)を務めることが決まった。習氏の名と政治理論は同党の規約に書き加えられることとなり、同氏は1970年代の毛沢東以来、最も強力な中国の指導者としての地位を固めた。

 この一件は、これまでの慣習を破り、自らのもとに権力を集中させたいとする習氏の意欲に、共産党が応えた最新の動向だ。習氏はこれまでにない規模で政治や経済などの機能を支配下に置いており、過去20年続いた集団指導制度が崩れている。

「今起きていることは、大きな危険性をはらんでいる。毛沢東氏が失敗を繰り返したのは、同時の中国が独裁状態だったためだ」とラム氏はいう。「習近平氏の場合、彼の言葉が法律になってしまう。チェックもバランスもなくなってしまった」

 5年に及んだ習氏の国家主席1期目が終わりに近づいており、3月5日から始まる形式的な議会の年次総会では、2期目の主席に任命されることになる。在任期限の撤廃は、その場で承認されることになるだろう。

 官職の任期は、終身在位の制度が廃止された1982年から憲法の条文に記載されている。

 政治アナリストらは、共産党が「2050年までに豊かで近代的な社会を確立する」という習氏のビジョンを大義名分に、国家主席任期撤廃を正当化しようとしている可能性が高い、と述べた。

「中国では今、数十年単位の壮大な計画を念頭に置いて国を見ることのできる、先見性と能力を併せ持った指導者を求めている。これが、任期撤廃を正当化する理論だ」とラム氏は語る。

「ただ、別の側面から見ると、毛沢東のような誇大妄想に過ぎないのかもしれない。彼は、自分自身が終身皇帝にふさわしいと信じているのだ」と彼は言った。

 北京を拠点とする政治評論家の胡星斗氏は、習主席が計画を遂行するのに、あと5年必要なのかもしれないが、国家元首が終身在位する時代には戻れないだろう、と話す。

 胡氏は「習主席は確かに、比較的長い期間指導者の立場にいられるかもしれない。これは、改革を進め、腐敗と闘う上ではメリットもある。しかし、中国で終身在位が復活することはあり得ない」と述べた。

 また、1966年から1976年に毛沢東が率いた文化大革命で起きた混乱と騒動を取り上げ、「我々には、終身在位のシステムから得た深い教訓がある」と話した。

 当局のプロパガンダは習氏のイメージ一色で、彼が個人崇拝を構築しようとする気配が感じられ、激動の時代を思い起こさせる。党の広報担当者は、「そのようなことはなく、習氏は7名の最高指導部の中核的立場である。決して独裁者ではない」と主張している。

 昨年の党大会で習氏は、自らの指導のもとで「新時代」が到来するとし、執政党として国家安全保障から本来の中国人らしい道徳的指導にいたるまで、すべてにおける先駆者になるというスローガンを提示した。党大会終了時には、習氏の2期目となる5年間を支える新役員として、5名を昇格させた。しかし、彼の後継者を明確に指名することは避けた。

 政治アナリストらは、明確な後継者がいないことで、習氏の長期在任への野心が生まれたのでは、と指摘した。

 北京では、2月26日から3日間、主要な人事などが審議される中央委員会が開催されたが、任期撤廃の発表はその前日に行われた。

 共産党の長老として知られる習仲勲氏を父に持つ習近平氏は、上海の党指導者から、2007年には全権力を握る政治局常設委員に昇進した。

 2012年に国家主席の座についた際、彼は7名から成る最高指導部(政治局常務委員)のトップという位置づけだった。その中で彼が信頼したのはベテランの王岐山氏だけだった。習氏は王氏に徹底的な腐敗摘発を任せた。その結果ライバル(現職、引退組を問わず)や潜在的な対抗相手がいなくなった。

 習近平氏は中央軍事委員会の主席でもあり、軍事パレードや防衛予算を増強するなど、軍事方面にも注目している。また、習氏は軍隊でのいじめ防止、また230万名の人民解放軍で30万名の人員削減を推進するなど、深く根付いた既得権益に打ち勝つ、という自身の能力を明示している。

By GILLIAN WONG, Associated Press
Translated by isshi via Conyac

Text by AP

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