2020年に米女性大統領が誕生する可能性は? 出馬を囁かれる女性たち

United States Senate

 セクハラや性的暴行などを告発する「#MeToo」ムーブメントが続くアメリカ。このムーブメントに後押しされ、怒れる女性たち(と一部男性)が次々に名乗り出て被害を告白し、加害者を告発する事例が相次いでいる。

 アメリカ政界ではドナルド・トランプ大統領が大統領選中多くの女性たちに告発された後に続き、昨年から今年にかけてこれまで政界でも共和党議員を中心として多くの政治家が同様に女性たちから性的被害を告発され、政治生命を断たれている。

 アメリカ史上初の女性大統領誕生は2016年に実現しなかったが、怒れる女性たちが中心となるこのムーブメントの波に乗り、2020年アメリカに女性大統領は誕生するだろうか。現在の時点で大統領選に出馬を囁かれている女性たちを紹介しよう。

◆エリザベス・ウォーレン上院議員
 政治サイト『ポリティコ』の1月2日付記事によると、マサチューセッツ州選出のエリザベス・ウォーレン議員(民主党)は政府やビジネス要人と会合するなど2020年出馬に向けたと思われる動きを見せているという。

 ウォーレン議員は民主党の中でも「プログレッシブ」と呼ばれる左派である。昨年1月、トランプ大統領に抗議するため同大統領の就任式翌日に行われ、一説によると世界で500万人という記録的参加者を集めた「ウィメンズ・マーチ(女性の行進)」でも演説し、女性を中心とした都会のリベラル人口に人気が高い。

 しかし2016年にトランプ氏を支援し当選に導いたといわれるアメリカ中西部や南部の保守派に人気がなく、ヒラリー・クリントン元国務長官と同じ運命をたどる可能性も高い。

◆カーステン・ギリブランド上院議員
 ニューヨーク州選出のカーステン・ギリブランド上院議員は昨年12月11日、トランプ大統領にかけられたセクハラおよび性的暴行容疑に関してCNNで「トランプ大統領は辞任すべき」と発言し注目を浴びた。

 その後トランプ氏はツイッターで「カーステン・ギリブランドが私のオフィスに選挙資金の寄付を乞いに来たのはそれほど昔のことではない(彼女は寄付金を集めるためには何でもした)」と性的ともとれる発言をすると、ギリブランド議員は12月13日、NBCの『トゥデイ』に出演し、トランプ氏を「いじめっ子」「セクシスト(性差別主義者)」と呼んでやり返した。

 ギリブランド氏は2017年5月2日付のCBSニュース記事で「2018年の中間選挙再選に焦点を当てているため、2020年出馬は考えていない」と話したが、前述したトランプ氏との口論は12月のことであるため、その後考えを改めた可能性もある。しかしギリブランド氏は知名度が低く、大統領選出馬は時期尚早ともいえるだろう。
  
◆番外編
 民主党議員以外にも大統領選出馬を噂される女性たちはいる。1人は米エンターテインメント業界の大物オプラ・ウィンフリー氏だ。

 しかしCNBCの1月25日付報道によると、その後『インスタイル』誌3月号のインタビューで「大統領選出馬に興味はなく、私にはそんなDNAがない」と話しているといい、一時期は乗り気だった出馬にしり込みをしている様子だ。

 またホワイトハウスの内情を暴いたベストセラーでジャーナリスト・マイケル・ウルフ氏の著書『Fire and Fury: Inside Trump White House』によると、トランプ大統領の娘で現在同大統領の上級顧問を務めるイヴァンカ・トランプ氏は「初の女性大統領になりたい」という希望を抱いているという。しかしイヴァンカ氏の「希望」を真剣にとらえるアメリカ人は今のところごく少数である。

 アメリカ政界では女性の発言力と存在感が着実に強まっている。しかし2020年に政権奪回を狙う民主党は、大統領候補者としてトランプ氏に対抗できる、政治経験豊かで男女両方から好感度が高く、かつ現政権に不満を抱く穏健派共和党員にアピール出来る中道派候補を選びたいはずだ。2020年、初の女性大統領誕生は困難である可能性が高いといえよう。

Text by 川島 実佳