日豪が「準軍事同盟」形成へ VFA締結目指す 中国紙は「平和への脅威」と非難
◆海外メディアの見方は日豪・日英は「準同盟国」
ターンブル首相は首脳会談に先立ち、安倍首相と共にヘリコプターに乗り込み、陸上自衛隊習志野駐屯地を訪問。米国製パトリオット迎撃ミサイルシステムや自衛隊によって運用されているオーストラリア製のブッシュマスター防護機動車(装甲車)を視察した。外国の要人が機密情報の多い自衛隊基地を訪問した前例はほとんどない。ブルームバーグは「海外のリーダーにとっては、極めて異例な名誉だ」と表現している。
日豪の武器輸出関連の話題と言えば、オーストラリア海軍の次期潜水艦選定レースで、採用が有力視されていた日本のそうりゅう型が、土壇場でフランス製の潜水艦に敗れた件が記憶に新しい。これにより日豪の防衛協力関係がぎくしゃくするのではないかという懸念もあったが、ブルームバーグは「オーストラリアが新たな潜水艦部隊の供給元に日本ではなくフランスを選んだ2016年のショックから、両国の軍事的関係が回復したことも示した」と、今回のターンブル首相の自衛隊視察を評価している。
日本がアメリカと結んでいる日米地位協定は、米軍部隊の恒久的な日本駐留を認めるもので、一時的な自衛隊の米国派遣などは念頭に置いていない。一方、VFAは演習などのために両軍がお互いの国に一時的に滞在することを認めるものだ。ブルームバーグ、FTといった海外メディアは、これを念頭に、日米は公式な軍事同盟関係にある一方で、日豪や同様の軍事協力の強化を目指している日英を、新たな「準同盟国」だと表現している。
◆中国メディアは警戒感あらわ
日本、オーストラリア、インド、ASEAN諸国のこうした「準同盟」関係構築の動きは、中国、北朝鮮の脅威への対抗と同時に、アメリカ依存からの脱却を目指したものだと言えよう。FTは、「ドナルド・トランプのアメリカ大統領選出も、(日豪)両国がパートナーシップ強化を目指すことを後押しした。彼ら(アジア太平洋地域諸国)は、アメリカがグローバル・リーダーシップから撤退することを懸念しているからだ」と、アメリカ・ファーストを掲げ、いつまでも他の民主主義国の庇護者であるとは限らないトランプ政権の方針も背景にあると見ている。
一方で、オーストラリアも日本同様、経済面では中国の経済力に強く依存している。ターンブル首相は来日中、記者との懇談の中で、南シナ海問題では、中国は昨年の東アジアサミットでのASEAN諸国との交渉で「本物の前進」をしたと評価した。これを豪シドニー・モーニング・ヘラルド紙は、首相は経済関係悪化を避けることを念頭に「中国に対する態度を軟化させた」と伝えた。
対する中国メディアは、日豪「準同盟」形成の動きを強く非難した。中国共産党系英字紙グローバル・タイムズは、日豪の連携を「平和への脅威」だと非難。対外向けラジオ放送チャイナ・ラジオ(中国国際放送)では、軍事評論家が、もしオーストラリアがアメリカと日本と「鉄のトライアングル」を築いたら、「日本が専守防衛から外向きの防衛へシフトをすることをオーストラリアが後押しするということだ」と牽制。それは「危険な前進」であり、「オーストラリアは今、岐路に立たされている」と警告したという(シドニー・モーニング・ヘラルド)。
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