37年のムガベ政権終焉の舞台裏 仲介役が明かす最後の駆け引き ジンバブエ

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 ジンバブエのロバート・ムガベ前大統領は、辞任の数日前に「限界」を悟っており、辞表に署名し、37年間に及ぶ政権に幕を下ろしたときには安堵した様子を見せたと、先月27日、ムガベ氏の罷免に向け対話を仲介したカトリック教会の神父が語った。

 ムガベ氏と数十年に渡り親交のあるフィデリス・ムコノリ神父は、AP通信のインタビューで、ムガベ氏は、大統領としての最後の日々には相当追い詰められていたが、エマーソン・ムナンガグワ氏への権力の移行が、段階的かつ「円滑」に進むよう望んでいたと語った。ムナンガグワ氏は、ムガベ氏が最近解任した元副大統領だが、現在はジンバブエの新大統領に就任している。

 ムコノリ氏によると、ムガベ氏が「第二の手段」である即時退陣を選択せざるを得なかったのは、ムナンガグワ氏が要請に応じず、亡命先の南アフリカから帰国しなかったためだ。

                                                                                                                 

 ジンバブエの首都ハラレ東部にあるチシャワシャ宣教教会で行われた今回のインタビューでは、ムガベ独裁政権の慌ただしい幕引きの裏で、どのような駆け引きが進められていたのかが明らかになった。ムガベ政権は、白人によるマイノリティ支配の終わりとともに、1980年に発足。当時は将来を有望される政権だった。しかし政権は、経済が衰退し、政府が機能不全に陥り、基本的自由が制限されるにつれ、徐々に疲弊していった事実上全国民からの圧力を受け、終焉を迎えた。

 11月14日、軍部がハラレに部隊を配備した後、事態は急速に展開した。93歳のムガベ元大統領は、その1週間後に辞任。24日には、政権交代を切望した何万もの民衆が集まり、喜びに沸く中、式典が開催され、ムナンガグワ氏が新大統領に任命された。

 ムコノリ氏によると、ムガベ氏は辞任の数日前にはすでに、これ以上大統領の座に残ることはできないと悟っていたが、権力の「円滑な移行」を実現するために、少なくとも来月の与党大会までは、その地位を守りたいという考えに固執していた。

 11月19日のテレビ演説において、ムガベ氏はその数時間前に、与党ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)によりその党首から解任されたにもかかわらず、与党大会の議長を務めると宣言し、辞任の表明を期待していた多くのジンバブエ国民に衝撃を与えた。

「あの時の国民が気の毒だ。彼らは何が起こっていたのか知らないのだから」とムコノリ氏は言う。「ムガベ氏はすでに、彼の政権がいよいよ限界だと悟っていた」。

 ムガベ氏は、大統領在任中には、巧みな政治能力と徹底した冷酷さを持ち合わせており、このような能力を発揮することで長期政権を実現したが、その後、辞任の時を自ら決めることはできなかった。ムナンガグワ氏が解任され、さらにムガベ氏の妻グレース氏が、夫から大統領の座を継承しよういう野望を見せたことで、国民から不満の声が多数あがる中、与党内の派閥闘争が頂点に達し、ムガベ氏は与党に対する掌握力を失った。

 軍は、ムガベ氏の周囲にいる「犯罪者」を標的とし、この問題に介入すると発表。ムコノリ氏は、政治的混乱の解決を目的とした、軍司令部との対話に向けて尽力し、大統領私邸、国会議事堂の大統領官邸、そして軍の兵舎を行き来した。

 軍と親密な仲にあり、ジンバブエから退避していたムナンガグワ氏が、対話に「欠けていた人物」だとムコノリ氏は言う。ムコノリ氏によれば、ムガベ氏は11月19日のテレビ演説を始める数時間前に、ムナンガグワ氏と電話で10分ほど会話し、元副大統領にジンバブエへの帰国を懇願した。「今すぐ戻ってくれ。今すぐにだ。この問題を解決しよう」

 ムガベ氏は、「ムナンガグワ氏が姿を見せることはなかったのだから、自身の考えを改めるべきだった」とムコノリ氏は言う。ムコノリ氏は、他にも数名の政府職員と協力し、仲介を進めていた。

 ムガベ氏が演説を行った翌日、ムナンガグワ氏は声明を発表し、身の危険を案じているためジンバブエには戻れないと述べた上で、ムガベ氏の即時退陣を求めた。ジンバブエ議会は、11月21日にムガベ氏の弾劾手続きを開始。ムガベ氏は、ジェイコブ・ムデンダ議長を通して辞任の意を伝えた。

 ムコノリ氏によると、ムガベ氏は、「議会は私に何か隠し事があると疑い、私が会議を止めさせるために辞任しようとしていると思うだろう」と案じていた。

 ムガベ氏は、ついに辞表に署名する時、まるで「やっと終わった」と言うかのように安堵する様子を見せたと、ムコノリ氏は語った。

 ムコノリ氏の話では、52歳のグレース・ムガベ氏は、夫ムガベ氏の解任に向けた対話において、大きな役割を担っておらず、ただ「必要に応じて、呼ばれた時に」参加したに過ぎない。ある時彼女は、疑いの目を向けるムガベ氏に対し、与党青年部の指導者2名が拘留されることとなった、軍を批判する声明への関与を否定した。

 ムコノリ氏によると、グレース氏は、自身がジンバブエにおける極めて重要な出来事の発端となったことに「気が付いている」ものの、その「すべて」が自分のせいだとは思っていない。

 ある1枚の写真には、微笑みながら夫の肩に腕を回すグレース・ムガベ氏と、ナミビアの元大統領2名が一緒に写っている。2人の大統領は、11月24日にはハラレに出向き、新大統領就任式に参加していた。ムコノリ氏によると、ロバート・ムガベ氏もムナンガグワ氏から招待を受けていたが、式典には出席しなかった。

 与党幹部ラブモア・マツケ氏の話では、与党職員らはムガベ氏に対し、彼を起訴することはないと約束し、「彼の家族は安全」だと保証した。ムコノリ氏はというと、今後について確約するようなことは何一つ述べなかった。

 ムガベ氏がこれから先もジンバブエにとどまるか否か問われた時、ムコノリ氏は含み笑いを浮かべた。

「彼がどこへ行けるというのか」とムコノリ氏は言う。「彼はここで生涯を終えるだろう」。

By CHRISTOPHER TORCHIA, Chishawasha, Zimbabwe (AP)
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP

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