「日韓は核武装を検討すべき」海外で持ち上がる議論 「核の傘は機能しなくなる」

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 日本は唯一の被爆国として核兵器廃絶を標榜する一方で、アメリカの同盟国として「核の傘」の提供を受け、核抑止力による安全保障を享受している。そのため、毎年核廃絶決議案を国連に提出しつつも、昨年は米露やNATO加盟国などとともに国連核兵器禁止条約への不参加を表明するなど、政府は難しい舵取りを強いられている。

◆アジア 核拡散の可能性
 北朝鮮の核実験やミサイル発射実験が一段と加速するのを受けて、東アジアにおける核軍備に関する議論が内外で白熱している。トランプ米大統領は大統領選の段階で既に日本の核武装の可能性について言及していたが、ニューヨーク・タイムズ紙は、「北朝鮮が核兵器を保有し続けるのであれば、アジア全域に核兵器が拡散しなければならない」とするキッシンジャー元国務長官の発言を紹介している。韓国では世論の6割が核武装に賛意を示しており、このシナリオは決してありえない話ではない。

                                                                                                                 

 さらに、オーストラリアン紙は、北朝鮮がアメリカ本土に届く大陸間弾道弾(ICBM)を実装した場合、北朝鮮が日本や韓国などの同盟国を攻撃としたとしても、アメリカが北朝鮮に対する報復攻撃を行わない可能性が高まり「核の傘」が機能しなくなる恐れがあるため、日本や韓国も核武装を検討すべきであるとする、ハーバード・ビジネススクールのラウィ・アブデラル客員教授による発言を紹介している。

◆核不拡散戦略の限界
 世界では核兵器不拡散条約(NPT)に基づく核軍縮が推進されているが、核保有を認められた米露中英仏の5ヶ国とそれ以外の非保有国との利害が対立し、十分な成果は挙げられていない。なお、北朝鮮に加えてインドやパキスタンも同条約を批准せず、それぞれ核兵器を保有して互いをけん制している。さらにはイランのようにNPTに加盟しつつも核兵器保有が疑われるケースもあり、イスラエルも核保有を確実視されるなど、世界の核兵器を巡る情勢は予断を許さない。

 上に述べたインドとパキスタン、あるいはイランとイスラエルのように、近隣国家が核兵器を保有すると、対立する国家も核兵器で対抗せざるを得なくなった例はこれまでにも見られた。1981年にイスラエルがサダム・フセイン率いる旧イラクの核兵器施設を破壊した「バビロン作戦」や、2007年にやはりイスラエルがシリアの核研究施設を破壊した「オーチャード作戦」のような実例に照らすと、日本が仮に核兵器を保有したとしても安心するにはほど遠いが、上記のキッシンジャーやアブデラル氏の発言は、この「核には核を」という勢力均衡論に沿ったものであり、一定の合理性がある。

 ただし、日本政府はいわゆる「非核三原則」に基づく政策を堅持しており、石破茂元幹事長が核兵器の国内配備に対する議論を呼びかけるなど核武装論が散発的に見られるものの、現時点では核兵器保有に積極的な姿勢を示していない。

◆「核アレルギー」はどこまで機能するか
 日本人が核兵器に対して消極的である要因として、スウェーデン国立防衛大学の研究者であるアーロン・ウーニンク氏は、『ディプロマット誌』において、平和主義と相まって日本に根強く存在する「核アレルギー」について改めて指摘している。ただし、この核アレルギーは福島第一原子力発電所事故によりさらに強化されたものの、日本や他の東アジア諸国は最終的に核軍備競争に突入せざるを得ないだろうとウーニンク氏は予想している。

 一方、ジョージ・ワシントン大学准教授のマイク・モチヅキ氏はワシントンポスト紙において、北朝鮮によるミサイル発射後に行われた9月のFNNによる世論調査でも80%近い日本人が核武装に反対していることなどを根拠に、日本の核アレルギーは払拭されないと述べている。さらには、核武装に反対する政治勢力の存在や、「核の傘」で十分な安全保障が確保されるとの見方を示しているが、こうした日本の核武装に関する否定的な見方をする報道は少数派にとどまっている。

 いずれにせよ、アメリカの「核の傘」では極東の安全を保障できない認識が大方の報道に共通しており、国民感情や世論に配慮しつつ国土防衛を実現するべく、英知の結集が求められる。

Text by 平湊音

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