オバマ時代に採択されて、トランプ時代に覆されたこと5つ

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 トランプ政権の一年目が、終わろうとしている。

「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン(訳:アメリカを再び偉大にしよう)」のスローガンを掲げ大統領選を戦ったドナルド・トランプ大統領だが、選挙戦中に前任のバラク・オバマ元大統領に対し容赦なく批判を浴びせていた。民主党政権の政策が国民の自由や経済力を損なったと同氏は支持者に訴え、政策転換を行うことで過去の栄光を取り戻すと約束した。

 この公約を実現すべく、トランプ氏は任期1年目を主にオバマ政権時代に採択された政策の改廃に費やした。この背景には、「議会審査法」の存在がある。議会審査法は、ある法案が可決されてから一定期間内であればその法律を無効にできるという規則で、つまり、オバマ政権の終盤に制定された法律を現議会が撤廃しやすいということだ。議会審査法はトランプ政権前には一度しか使われることがなかったが、現政権は既に15回も利用している(ポリティコ)。

 具体的にどのような政策をトランプ政権は改廃したのか。

◆銃規制の廃止
 精神疾患を持つ人が銃器を入手しないように作られた規制が、2月18日に廃止された。オバマ政権が2016年12月に制定したこの規制は、社会保障局が特定の精神障害者に関する病歴情報を銃購入者の身元確認システムに登録することを義務付けている(CNN)。2012年のサンディフック小学校銃乱射事件など、近年大規模な乱射事件が続発していることへの対策として制定された。

 共和党は、米国憲法修正第2条(銃保有の権利)を名目にあらゆる銃規制に反対している。トランプ大統領は2月18日に撤廃決議に署名したが、タイム誌によると11月にテキサス州の教会で起きた乱射事件について同氏は「これはメンタルヘルスの問題だ」と断言している。

◆トランズジェンダーの権利
 銃規制撤廃のたった4日後にトランプ政権が発表したのが、トランスジェンダー(心と体の性が一致しない人)の児童への差別禁止に関する政策の撤廃だ。

 ノースカロライナ州は2016年に、児童は出生証明書に記された性別のトイレを使用しなければならないとした州法を制定したが、オバマ政権はそれをトランスジェンダーへの差別として、本人の性自認に沿って児童を扱わなければならないという通達を出した(ブルームバーグ)。

 通称「バスルーム・ビル(トイレ法案)」はアメリカで一大議論を巻き起こし、NBA(アメリカのプロバスケットボールリーグ)が州法への抗議としてオールスター戦開催地をシャーロット市から州外へ移すなどの事態が起きた(BBC)。

 トランプ政権は 2月22日に連邦政府の通達を撤回すると発表したが、翌月にノースカロライナ州がトイレ法を撤廃している。

◆国定史跡の見直し
 4月26日にトランプ氏は大統領令で、1996年以降に指定されたナショナル・モニュメント(国定公園など)を全て見直すよう命じた。

 アメリカでは、1906年に制定された遺跡保存法によって国有地にある遺跡の破壊が違法とされている。そのため、歴代大統領は国定公園を指定することで自然環境の保護をしてきた(NPR)。

 トランプ大統領は、オバマ氏の国定公園指定による環境保全を「経済成長を妨害する」として批判。大統領令を出したのは、これらの土地の地下資源を開発したいという思惑があるという(サイエンティフィック・アメリカン誌)。

◆オンラインプライバシー
 オンラインプライバシーの保護を目的にした規制をトランプ政権は4月3日に撤廃した。この規制は、インターネットプロバイダが利用者の個人情報を第三者に販売する際に本人から許可を得ることを義務付けたもので、オバマ政権下の連邦通信委員会が制定した(タイム誌)。

 ニューヨーク・タイムズ紙によると、共和党の規制反対派はプロバイダ企業と他のインターネット企業の不平等性を懸念していたという。プロバイダ企業には、グーグル社やフェイスブック社などにかかる規制より厳しい基準が設けられていたからだ。一方で、プロバイダ企業は「インターネットにつながるための基本的な手段」であり、ほとんど競争がない業界であることから、規制の差別化は妥当であるという意見もある。

 この規制は議会審査法の手続きで廃止され、それによりプロバイダ企業は利用者の個人情報収集により積極的になると予想される(ニューヨーク・タイムズ紙)。

◆警察に軍用の武器
 トランプ大統領は8月28日、国軍の余った武器や車両を州・自治体の警察に払い下げるプログラムを再開する大統領令に署名した。このプログラムは2015年にオバマ前大統領が規制していたものだ。

 2014年夏にミズーリ州ファーガソンで白人警察官の黒人射殺に対する抗議デモが起きた際、地元警察がデモを鎮圧するために武装車両を展開し、過剰な対応をとった。この事件が市民の激しい怒りを買い、オバマ大統領が武器の払い下げを大統領令で規制したのだ。

 ワシントン・ポスト紙によると、警察に払い下げできるようになるのは、武器を搭載した装甲車や大口径の銃、グレネードランチャー(てき弾筒)など。禁止はされていなかったが規制が緩和される武器には、有人及び無人航空機や爆発物などが含まれる。

 トランプ政権側は、これらの武器は「警察官を危険から守る」ために必要だと主張している。また、これらの武器は警察の士気を高め、犯罪を減らす要因になるとしている(シカゴ・トリビューン紙)。

◆いつまで続くのか
 以上からわかるように、環境保全から治安問題にいたるまで幅広い分野においてトランプ大統領はオバマ政権の政策を覆そうとしている。また、この動きは個々の影響だけでなく政策改廃の数でも明らかだ。ワシントン・ポスト紙によると、トランプ政権はこれまで100以上ものオバマ政権の政策を廃止することに成功している。一方で、政策を廃止するだけで独自の政策を打ち出せていないという批判の声もある。

 同じように政策転換を続けるのか、またそれらの行動は本当にアメリカを再び偉大にすることに繋がるのか。それらがトランプ政権2年目の見所になりそうだ。

Text by Masaru Urano