2016年選挙の傷を引きずる民主党 塩を塗り込むトランプ大統領

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 民主党の傷は時が経過しても癒されていない。

 2016年の大統領選で民主党は壊滅的かつ衝撃的な敗北を喫した。彼らは1年が経過した今でも、その後処理に追われている。党内で目立つのはいまだに内紛、対立、敗北原因の究明ばかりで、民主党は来年の中間選挙で退勢する恐れがある。

 ヒラリー・クリントン氏は昨年の選挙戦について記した著書『What Happened』の販促のため全国行脚をしているところだ。彼女が予備選挙で打ち負かしたバーニー・サンダース氏とジョー・バイデン前副大統領は、2020年の大統領選における最有力候補の二人である。そしてバージニア州知事選挙で接戦が繰り広げられているときに、民主党全国委員会(DNC)前委員長のドナ・ブラジル氏が先週、予備選挙でクリントン氏が有利になるよう党が仕組んでいたのではないかと発言して議論を再燃させた。

「2016年は、1年が23ヶ月もあった前例のない年になるかもしれない」と、クリントン陣営の側近だったジェシー・ファーガソン氏は語っている。

 多くの民主党員同様、ファーガソン氏も過去を引きずることの危険を承知している。2012年にバラク・オバマ氏に敗北を喫した共和党は、その敗北を「綿密に分析」した結果、増加する少数派コミュニティの支持を取り付けるために移民に対する姿勢を軟化させるべきだと主張した。実際はどうだったか?トランプ氏は移民に対し強硬的な立場を取り、すぐさま次期大統領に選出された。

「私たちが犯すかもしれない最大の誤りは、どうすれば2018年と2020年の選挙に勝てるかを分析しないで、どうすれば2016年の選挙に勝てていたかの分析にこだわることである」と、ファーガソン氏は指摘している。

 トランプ 氏も安穏としていない。選挙期間中、彼はサンダース氏とクリントン氏の分断を陽気に煽り、民主党幹部が予備選挙で クリントン氏に有利になるよう取り計らった手法を明らかにする目的でハッキングされたDNCの電子メールを、執拗に宣伝してまわった。その動きは収まらず、今では自陣営がロシアと関与していた可能性よりも、諜報機関の職員がDNCのメールをハッキングしたと非難している民主党の共謀こそ連邦捜査当局は捜査すべきだと主張している。

 大統領は、民主党の最も深い傷にさらに塩を塗り込んでいる。サンダース氏の支持者は、今冬に行われたDNC委員長の選挙でミネソタ州選出のキース・エリソン下院議員を後押ししたが、彼は前労働長官のトム・ペレス氏に僅差で敗れ、今では ペレス氏の下で副委員長を務めている。

 ペレス氏の前任者がブラジル氏だった。彼女はいま、昨年の選挙に関する自著の販促をしているところだが、選挙戦に対するその解釈により民主党が混乱している。彼女によると、クリントン氏指名の行方が混沌としていた9月にバイデン氏に変更することを検討したという。また、クリントン陣営とDNCとの資金調達に関する合意は、クリントン氏に党の資源を度が過ぎる程度に統制できるようにしたと彼女は述べている。

 民主党員の中には、同党の候補者が接戦を繰り広げているバージニア州知事選という重要な選挙を数日後に控えたこの時期に、再び党の分断を目にして不安になる者もいた。

「現大統領は、私たちが大切にしている全ての組織を分断する人物だ」と、サンダース氏が立候補した大統領選でシニアアドバイザーを務めたロバート・ベッカー氏は述べた。彼はブラジル氏の発言の時期については批判していないが、問題を蒸し返すのはもう止めにしてほしいと思っている。「今は矛を収める時だ。我々は、本来の目的である、選挙での勝利に専念しなければならない」。

 民主党はいくつかの大きな選択を迫られている。特にラストベルト地域の諸州でトランプ氏に大きく傾き、選挙人団で現大統領に多数の票を投じた非大卒の白人層への支持取り付けを目指すべきだと主張する者もいる。他方、保守的な傾向はあるがトランプ氏を嫌悪し、高等教育を受けた裕福な白人にアピールすべきだと主張する者もいる。さらには、若者、黒人、ヒスパニックの有権者への支持をさらに強化することで党の基盤確立を加速させるべきという主張もある。

「私たちは、2018年の選挙で役立ちそうな形で2016年の結果について議論しているにすぎない」と、民主党はもっとリベラルな有権者に目を向けるべきだと主張しているニューヨーク在住の民主党ストラテジストであるレベッカ・カッツ氏は話している。「2018年の選挙で勝利するには、私たちの基盤層に投票してもらわないといけない」。

 来年の選挙に向けて、いくつか有望な兆候がみられる。

 民主党は、来年の中間選挙で下院での過半数確保を目指せる立場にある。共和党には引退する議員が多いほか、激戦州で民主党候補者が順調に集まっていることが背景にある。下院を掌握するために民主党が逆転しなくてはいけない議席数は24で、最重点地域は、昨年にクリントン氏が得票でトランプ氏に勝利した23の選挙地区である。上院はさらに厳しく、トランプ氏が勝利した州で10人の 民主党候補者が当選を目指す。

 民主党には新人候補が溢れており、下院での選挙に向けて多額の資金が流入している。Roll Callが公表した分析によると、最近の四半期でみると16人の民主党新人が共和党現職をリードしているという。

 一方の共和党も、深刻な内紛の渦中にある。引退する2人の上院議員は、トランプ氏は危険であると警告した。前大統領上級顧問のスティーブ・バノン氏は、共和党上院議員に対抗して予備選挙での挑戦を目指している。共和党による立法作業の日程は完全に崩壊してしまうリスクがあるほか、2020年の選挙ではオハイオ州知事ジョン・ケーシック氏のような有能な共和党員がトランプ氏を凌ぐのではという推測も渦巻いている。

 民主党には、大統領選出馬を検討している代議士が多数いるが、長老ともいえるサンダース氏(76)とバイデン氏(74)の2人がおぼろげながら有力となっている。それでも民主党内には、前回の選挙戦とは異なり党の支持を確実に取り付けている候補者はいないという議論がある。「支持を固めた人はいない」と、ストラテジストのジム・マンレー氏は述べている。

 2016年にサンダース氏の陣営でマネージャーを務めたジェフ・ウィーバー氏によると、党内でみられる分断は、リベラル派アクティビストと中道派エスタブリッシュメントとの間で1990年代から続く対立が新たな形で現れたものであるという。「分断は膨らみ続ける。そして対処しないとそのまま膨らみ続け、選挙戦への影響も止まらないだろう」と、ウィーバー氏は話している。

By NICHOLAS RICCARDI
Translated by Conyac

Text by AP