オーストラリア、同性婚合法化へ “郵便”国民投票で支持派が圧勝

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 オーストラリアで同性婚の賛否を問う国民投票が実施され、賛成票が反対票を大幅に上回る結果が11月15日に発表された。この結果を受け、マルコム・ターンブル首相率いる保守政府は12月に同性婚法案を提出する予定だ。

◆支持派が6割で圧勝
「同性のカップルが結婚できるように法は改正されるべきか」を問う今回の郵便投票は、9月から約2ヶ月をかけて行われた。オーストラリア統計局によると、79.5%に当たる1270万人以上の有権者が投票(投票率79.5%)し、うち61.6%が賛成票、38.4%が反対票を投じた。

 ネットメディア『バイス・ニュース』によると、賛成票が圧倒的に多かったこの結果は驚くことではないという。婚姻の平等に対する支持が年々増えていることは、過去数年の世論調査で明らかになっていた。また、投票期間中に行われた世論調査でも「支持」の回答は常に60%前後であった。

 婚姻の平等を支持する国民が大多数であったのにもかかわらず、宗教保守派を代表する政治家らの反対を乗り越えることができず、議会で同性婚に関する法案は議論されなかった。この膠着状態を打破するために行われたのが、今回の郵便投票だ(クォーツ)。

◆政治家の反応は
 開票結果を受け、婚姻の平等支持者であるターンブル首相(自由党)は、「圧倒的な」結果を議会議員らが受け止め、法案起草にコミットするべきだと述べた。そして記者団に対し、「市民は公平性に『イエス』、コミットメントに『イエス』、愛に『イエス』の票を投じた。今度はオーストラリア連邦議会の私たちが行動を起こし、オーストラリアの市民に託された任務を遂行し、今年のクリスマス前までに完成させるべきだ−−それが私たちのコミットメントでなければならない」と語った(タイム誌)。

 一方、同性婚反対のキャンペーンに携わってきたトニー・アボット前首相(自由党)は15日、シドニーのラジオ番組で「私は民意に反して投票をしません」と語り、法案審議において議事妨害を行わないと誓った(シドニー・モーニング・ヘラルド紙)。

◆反対派は宗教と文化が要因?
 150の選挙区のうち133区が賛成多数、17区が反対多数となった。驚くことに、反対多数の17区のうち12区が西シドニーに位置する。なぜ都市部に近いこの地域に反対票が集中しているのだろうか。

 オーストラリア放送協会(ABC)選挙アナリストのアントニー・グリーン氏によると、その理由は論点の種類にある。オーストラリアでは通常、政治に関する問題では階級対立が顕著に現れるが、同性婚などの「道義」論点ではこの対立が消え、文化や宗教によって票が分かれるという。つまり、文化的な要因が反対票に大きく関わっているのだ。

 シドニー・モーニング・ヘラルド紙によると、反対票の多かった西シドニーのブラックスランド地区やワトソン地区ではレバノンや中国のバックグラウンドを持つ有権者が多数を占めていて、72%の市民が海外で生まれた両親を持つ。彼らは裕福で無宗教の白人が住むシドニー近郊を囲む郊外に住み、歴史的に労働階級に属す。今回、彼らが宗教的もしくは文化的な理由で反対票を投じたため、このような結果になったとみられる。

 彼らを代表する議会議員のほとんどは労働党党員だが、ほとんどが婚姻の平等を支持する。代議士の政見と有権者の政見にズレが生じたが、議員らは投票行動を変えることはなく支持派であり続けると話している。ワトソン地区のトニー・バーク議員(労働党)は、「前回の選挙から『イエス』と決めていた。このことは変わらない」と話している。ワトソン地区は賛成票がたったの30.4%で、全国最低の賛成票数だ。

◆法案の審議はこれから
 6割越えで圧勝した支持派だが、これで婚姻の平等が保証されたわけではない。今回の郵便投票には拘束力がなく、あくまでも世論調査のようなものだ。よって、この結果を踏まえてオーストラリア政府は改正法案を議会に提出し、通過させなければならない。与党の保守連合(自由党や国民党など4党)の中には宗教的理由から反対派に傾いている議員もいるため、婚姻の平等と信条の自由のバランスを取った法案で彼らを引き入れることが最大の課題となる。

 開票結果が発表された直後に、ディーン・スミス議員(自由党)が法案を連邦議会に提出した。この法案では、キリスト教の司教や牧師などの教役者が同性婚結婚式の参加を拒否する自由を残し、信条の自由とバランスをとっている。この法案は、ターンブル首相をはじめとした穏健保守派と野党の労働党と緑の党から支持されている(ABC)。

 スミス議員より保守寄りのジェームズ・パターソン議員(自由党)も法案を起草していたが、正式に法案を連邦議会に提出するまでには至らなかった。

Text by Masaru Urano