オーストリアの「31歳の首相」に待ち受けるもの マクロン仏大統領との違い

Matthias Schrader / AP Photo

【ウィーン・AP通信】 若くて躍動的で革新的な、オーストリアの次期首相候補セバスティアン・クルツ氏(31)は、既にエマニュエル・マクロン仏大統領と比較され始めている。

 しかし、マクロン氏が構造改革の公約を果たし始めている中、自身や連立相手の政党から受ける拘束によって、クルツ政権下のオーストリア政治はこれまでと大体似たようになる可能性がある。

 まずは、彼らの類似点から見ていこう。39歳のマクロン氏は欧州連合の中で最も若い元首のうちのひとりである。一方、国政選挙で右派のオーストリア国民党を勝利に導いたクルツ氏が連立政権協議をまとめることができれば、彼はヨーロッパで最も若い国家元首になる。

 程度は違うにしろ、両者は、既存の制度の下で名声を高めてきたにもかかわらず、それを揺らがせるような政治運動をもたらしたと主張している。

 現在外務相を務めるクルツ氏は、マクロン氏と同様に、若々しくて敏腕であるといったイメージを身にまとっている。加えて、両者は対抗する政党や、民間部門、学界の専門家を引き抜いてきた。また、両者は、それぞれの国で強い基盤を築いてきた社会民主党や社会党に対抗して、経済的自由主義を支持している。

 しかしながら、両者には欧州連合の重要な課題の中で一つ意見の相違がある。それは、移民問題についてだ。マクロン氏は右派政党国民戦線のマリーヌ・ル・ペン氏の反移民的な姿勢に対抗することによって勝利したが、エコノミスト・インテリジェント・ユニットのぺピン・ベーグセン氏は、クルツ氏は排他的な右派のオーストリア自由党の「公約の多くを共有する」ことによってオーストリアの選挙で勝利したと分析している。

 それにゆえ、クルツ氏は、彼の公約を実現するにあたって、様々な障害に立ち向かわなければならないだろう。

 マクロン氏は、自ら政党を作ることで、昨春の大統領選挙と6月の議会選挙で伝統的な政党に圧勝した。彼の共和国前進党はまさにフランスで一時は強力だった社会党をズタボロにし、保守的な共和党を無力化したのだった。

 政敵を骨抜きにしたマクロン氏は、既にフランスの労働組合の力を弱め、雇用者が雇用と解雇をしやすいようにする法改正をいくつも行った。このような法改正が就任からわずか4ヶ月の間で行われたということは、制度の変更に消極的なことで有名なフランスでは極めて目覚ましいことであった。

 先月、マクロン氏は、失業給付と職業訓練プログラムに関した、2段階目をうたった労働改革を立ち上げた。さらに彼は、富裕税を廃止し、政府支出と税収をともに減らした予算を公開した。富裕税の廃止もまた、富裕層へ重い課税をした社会党政権からの変革だった。

 クルツ氏は、対照的に、一人で統治することができない。彼の政党は選挙で第一党となったが、絶対多数の確保には程遠く、連立政権を組む相手を見つける必要がある。おそらく、右派のオーストリア自由党との連立となるだろうが、オーストリア社会民主党との連立が復活する可能性もまだ残されている。

 志高いクルツ氏は、彼の勝利の後、支持者に感謝を述べながらこの勝利が「新しい政治の形をつくる」チャンスだと述べた。

 彼はさらに、「この国に変化を起こすために、自分の全ての力をかけて戦うことを約束しよう」と述べた。

 しかし、連立候補の政党が両方とも彼のオーストリア国民党とそれぞれ幾つかの重要な争点で意見を異にしており、クルツ氏は彼の公約を変えるような譲歩をしなければ、前連立政権が経験したような内輪もめに直面することになる。

 しかも、アナリストのアントン・ペリンカ氏によると、連立相手は「クルツ氏を完全な勝者にさせる訳にはいかない」ため、何とかして彼の歯車を狂わせてくるだろうと予測されるのだという。

 しまいには、クルツ氏自身の政党も彼の障害となるかもしれない。

 クルツ氏が昨春に党首となったときには、彼は単独で人事と政策方針を決める権力を手に入れ、現状に満足しているこぢんまりとした老人の集まりのようだとされてきた党のイメージを変えようと奮闘した。彼の選挙運動のポスターには政党名の記述がなく、代わりに笑みを浮かべたクルツ氏と「新しい時代の幕開け!」というスローガンが掲げられた。これは、彼が内破した前連立政権の一員だったことを鑑みると、とても果敢な戦略であった。

 しかしながら、オーストリア国民党には、地方長官や企業や労働者団体、利益団体など長年オーストリアの政治を牛耳ってきた、強力な人々が未だに存在する。政権を獲得するという政党の目標が達成された今となっては、彼らが権力を取り戻そうとしない保証はない。

 ベーグセン氏は、「クルツ氏が長年権力を持ってきた利益団体をどれだけ制御できるかどうかは未だ不明瞭だ」と語った。

 また、ペリンカ氏は、クルツ氏が困難に直面する未来もそう遠くないだろうと警告した。

 彼曰く、「現在、クルツ氏と『古きよき』オーストリア国民党はハネムーン期間にあるに過ぎない」のである。

By GEORGE JAHN
Translated by AnthonyTG

Text by AP

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