中国、強硬外交時代に突入か 2期目の習主席の大きなビジョン

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【北京・AP通信】 今年夏公開の映画『戦狼2』は、中国のアクションスター、ウー・ジン氏演じるタフで愛国心溢れる主人公が中国人民解放軍の援護を受けながら味方の中国人だけでなく敵のアフリカ人までも救う。

『戦狼2』は観客から大きな支持を得て、中国の映画興行収入最高記録を更新した。映画のラストシーンでは中国のパスポートと共に「あなたには偉大な祖国がついていることを、忘れないでください」という言葉が映し出される。それを見て国家を歌いだす観客もいたという。

 このような極めて旺盛な愛国心を巧みに扇動してきたのが、中国の与党である中国共産党中央委員会総書記、習近平国家主席だ。習氏には中国国民に対する党の影響力を強めると共に、米国や西洋諸国の力が弱まった時を狙って自国の存在感を示したいという野心がある。

 先月開催された中国共産党全国代表大会では、参加党員らが習氏の掲げる政策を支持した上で、習氏の党総書記(任期5年)2期目続投を承認した。これを受け習氏の外交政策はさらに強硬なものになり得るとオブザーバーは言う。

 マイアミ大学の政治学教授ジューン・トイフェル氏は、「習氏は勢いに乗っている」と言う。中国政府が南シナ海に建設した人工島の開発を進めていることからもわかるように、習氏は他国への圧力を徐々に強めており、中国の影響力は今後も拡大を続けるだろうとトイフェル氏は予測している。

 先月18日、中国共産党大会の開幕式で習氏は演説を行い、中国は「自主的外交で平和を」追求し、防衛対策として軍事力の保持に努めると繰り返し主張した。しかし同時に、いざとなれば対立もいとわないとし、その姿勢を過小評価しないよう他国を牽制する発言もあった。

 習氏は北京市の人民大会堂に集まった参加党員らに向け、「いかなるものであろうと、国の利益を害するものを許すような中国であってはならない」と訴えた。

 鄧小平が1980年代後半に徹底的なマルクス主義を唱えて台頭して以降、中国は改革開放政策の指導者である同氏の「控えめな姿勢で好機が来るのを待ちながらも、物事を進めておく」という考え方を固持してきた。

 ここ10年の世界的な経済危機に各国が苦しむ中、中国はさほど大きな打撃を受けなかったこともあり、鄧小平時代の方針にも変化が見られるようになった。以降、習国家主席指導のもと中国の外交政策はますます強気になっている。

 中国は自国の急成長する経済と大量の外貨という経済力をもとに他国への影響力を強め、国際社会において大きな野心を見せている。そして今年、中国はある重要な転換期を迎えた。中国人民解放軍がジブチ共和国で中国初となる海外基地建設に乗り出したのだ。過去数十年にわたり、中国はこのような軍事施設を帝国主義者が残した冷戦の遺物だと非難し、建設には手を出さなかったが、今年になってその主張をひっくり返すこととなった。

 中国の最終的な目標は明らかだ。東アジアを代表する国となり、経済的にも文化的にも世界を牽引する大国というかつての中国を取り戻すことだ。

 今月18日の共産党大会開幕式での演説において、習氏はこのような目標を繰り返し述べ、中国の国際社会においての地位向上というビジョンを説明した。習氏によると、中国は2050年までに「国家として総合的な力を確立し、世界に大きな影響力を及ぼす国際社会のリーダー」になるだろう。

 オーストラリアのシドニー大学でアジア・太平洋の安全保障問題を専門としているジンドン・ユアン氏は、「中国が目指すべき方向性や在り方について、習氏はかなり大胆なビジョンを示している」と言う。

 共産党大会が無事に閉幕となれば、中国は国際機関における役割の拡大、アジアインフラ投資銀行を始めとする新たな取り組みの先導、それに対する出資などの外交政策を、これまで以上に強気な姿勢で進めていくと思われる。また東・南シナ海やインドとの国境付近など、緊張感の高まっている周辺地帯により積極的に踏み込んでいく可能性もある。

 習氏のビジョンが最も明確に表れている戦略といえば、同氏が5年前の国家主席就任ごろに提唱した一帯一路構想だ。一帯一路構想とは、道路、鉄道、港湾といった交通網をいたるところに整備し、中国と東南アジア、中央アジア、アフリカ大陸、ヨーロッパ、あるいはさらに遠くの地域を繋げることを主な目的とした経済戦略で、数千億ドルの予算が見込まれる大規模事業だ。これにより各国の経済に欠かせない国となり、同時に政治的影響力も増大させることが中国の目標だ。さらに過剰な生産能力と国内市場の傾きを受け伸び悩んでいる中国企業に好機を与えるという狙いもある。

 ユアン氏によると、中国は一帯一路構想の実現に向け、国際情勢を上手く利用しながらも、周辺各国や米国との関係悪化に繋がるところまでは踏み込まない外交術を磨いてきた。

 しかし、ときに中国は決して主張を曲げない頑固さを見せる。例えば昨年、南シナ海で中国が領有権を主張していた海域について、フィリピンが提訴した結果、オランダ・ハーグ国際司法裁判所は中国側の主張の大半に法的根拠はないとしたが、中国政府はその判決を遺憾とし受け入れなかった。

 韓国がアメリカのミサイル迎撃システムを配備したことに対しても、中国政府は安全保障上の危機だと非難し、強固な態度をとっている。中国国営メディアは韓国を批判し、韓国への団体旅行が禁止される事態にもなった。在中韓国企業も大きな打撃を受けている。

 しかしこのような強硬路線よりも現実的なアプローチの方が功を奏する場合も多々ある。

 ドナルド・トランプ米大統領が中国の北朝鮮に対する対応を不十分だと厳しく批判したり、中国の貿易に不正があったと糾弾したりした時にも、中国政府はあえて強く反論に出ることはせず、穏健な対応を見せた。習氏は同時にフロリダにあるトランプ氏の別荘マー・ア・ラゴ訪問を首尾よくこなしており、これに対する世論も好意的なものが多く、中国政府にとっては望ましい結果となった。11月には今度はトランプ氏が、北京を訪問する予定だ。

 中印国境付近では最近まで膠着状態が続いていたが、中国政府が国境からの中印両軍撤退に合意した。中国がホストを務めたBRICs首脳会議が開催される数日前のことだ。首脳会議には習氏とインドのナレンドラ・モディ首相の両者が出席している。

 フィリピンに対しても中国政府は態度を軟化させており、ロドリゴ・ドゥテルテ比大統領に対しインフラ投資の実施と、イスラム過激派との紛争への軍事支援を提供した。さらに2012年に中国が実効支配したスカボロー礁についても、以前はそこを漁場としていたフィリピンの漁船が漁業活動を再開することを認めた。

 中国のこのようなアプローチは、効果を発揮しているようだ。ピュー研究所が最近実施したアンケート調査によると、フィリピン人の3分の2が中国と経済的な関係性を強化することが重要だと回答した。対して中国と領土問題で対立を続ける方が重要だと回答したのは28パーセントにとどまった。2015年に行われた同様の調査においては、フィリピン国民の意見はほぼ半々に割れていた。

 中国がどのような外交政策をとるかは、内政の状況にも左右される。ペンシルバニア州・ベスレヘムのリーハイ大学に在籍する中国外交政策の専門家、イーナン・ホー氏によると、中国政府指導部にはナショナリズムを扇動することで、国民の反発や不満を抑止してきたという伝統がある。

 共産党大会で習氏が総書記続投と政策について思うような支持を勝ち取れなければ、「今後も他国に対する攻撃性を強め、いずれかの国に対立を仕掛けることもあり得る。そうすれば国民の愛国心を喚起し、支持を集めることができるからだ」とホー氏は言う。

By CHRISTOPHER BODEEN
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP

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