日本に真の二大政党制は訪れるか? 「野党の主流は立憲民主党」との海外識者も
22日に投票日を迎える衆院選の選挙戦も中盤に入った。希望の党の登場で、自民党一強時代も終わり、二大政党制移行かと見られたが、希望の党の人気低下や野党再編による票の分散などから、結局自公で300議席を取るのではという予想もある。外からは理解しがたい日本の政治の行方を、海外メディアが論じている。
◆民進党「消滅」で、保守革新がついにクリアに
イースト・アジア・フォーラムに寄稿したニュー・サウス・ウェールズ大学のオーレリア・ジョージ・マルガン教授は、日本の政党制のゆくえを占うのは容易ではないとし、党組織の流動性、内部分裂や過渡的に存在する多くの政治集団、そして党を渡り歩く政治家などが、これまでの混乱を表していたと指摘する。
しかし、希望の党の登場により、民進党が事実上消滅したため、日本の政党制の線引きが明確になったと指摘する。イデオロギーを分けるのは、主に憲法と安全保障であるため、伝統的な保守革新の軸が復活。現在は、右寄りの自民党、希望の党、日本維新の会に対し、左寄りの立憲民主党、社民党、共産党に分けられたとする。ただし公明党だけは連立政権に入るため政策を二の次にしていると述べている。
◆ポピュリズム盛り上がらず。保守vs保守で、選択肢にもなれず
エコノミスト誌は、日本では1955年以来、数年を除きずっと自民党が政権を取ってきており、このレベルの独占は欧米では見られないという政治学者猪口孝氏の言葉を紹介する。同誌は、自民党は保守と言われるが、ある意味古臭い社会民主主義で、年金制度を熱心に守り、派手なインフラ工事のため国民の金に手を付け、金と雇用を地方にばらまき、国の借金を増やし続けてきたとする。地方で強い自民党は、一票の格差の問題で有利であり、低い投票率にも助けられてきたと批判的だ。
上述のマルガン氏は、そもそも希望の党には、革新的、中道、非保守的プラットフォームを提供する、自民党に代わる選択肢となることが期待されたと見ている。しかし憲法改正などのように、両党がイデオロギー的に同じ側にあること、また小池氏自身が出馬せず、政権を取ることが目標ではないため、自民党以外の真の選択肢を提供するのではなく、単にもう一つの保守オプションを提供しているに過ぎないと述べる。
アジア・タイムズは、自身の人気と大衆受けしそうな公約で政界をかき回し、安倍首相の連立与党にチャレンジする小池氏の動きを、日本版ポピュリズムとする見方があることを指摘する。しかし、東京大学社会科学研究所のグレゴリー・ノーブル教授は、希望の党の登場がトランプ大統領誕生やイギリスのEU離脱のような、ある種のポピュリズムを今まさに日本が受け入れようとする兆候とは思えないとする。同氏による定義では、ポピュリズムとは反エスタブリッシュメントのメッセージと権威主義的傾向とともに、通常排外主義を含んでいるものだ。国民の経済的不安も原因となるが、ほとんどが帰属意識と恐れが引き起こすものだという。そういった意味では、社会的統合のレベルが高く、移民が少ない日本では、マジョリティの秩序が脅かされることは少なく、文化的反動も少ない。よって小池氏にポピュリズムを求める有権者は限定的だと見ている。
◆立憲民主に期待。イデオロギーを曲げるな
マルガン氏は、日本に二大政党制を作るという意味では、民進党の解体は一歩前進になったと述べ、野党の主流となる可能性が最も高いのは、立憲民主党だと述べる。安全保障や憲法に関しては中道左派としてのしっかりしたポリシーを持っているため、反自民の有権者には支持されるだろうと見ている。
もっとも同氏は、立憲民主党が政権を取るために希望の党と手を組むようなことがあってはならないとする。そのようなことは、日本の政党におけるあいまいな政策の違いを長引かせ、政党イデオロギーより都合の良い連携の優先を続けることになると警告している。国内では民進党再結集かというニュースも報じられているだけに、政治家はこの言葉を重く受け止めてほしいものだ。