米共和党「銃規制に動く予定はない」、民主党の要求拒否 ラスベガス乱射受け

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【ワシントン・AP通信】 3日、米共和党指導部はラスベガスで発生した銃乱射事件を受けて、銃規制強化に向けたアクションを起こす予定はないと発表し、銃購入時に行う身元確認の対象拡大、半自動式拳銃の規制強化という民主党の要求受け入れを拒否した。しかし同時に、共和党が提案中である銃消音器 (サイレンサー) の購入規制を緩和する下院法案の審議も見送るとした。

 少なくとも59名が死亡し、100名を超える負傷者を出した大規模銃乱射事件の後、ミッチ・マコーネル上院多数党院内総務 (共和党・ケンタッキー州) は報道陣に向け「いかなる議論であろうと立法的解決を論じるのは時期尚早だ」と述べた。

 ポール・ライアン下院議長 (共和党・ウィスコンシン州) は、共和党主導の下院委員会で先月可決されたサイレンサーの購入緩和法案について、現時点では下院が制定に向け行動に移る予定はないと発表した。法案の発案者でサウスカロライナ州出身のジェフ・ダンカン下院議員は、この法案によりハンティングで銃を使用する人々の聴覚を保護できると主張している。

 ライアン氏によると同法案の審議は「現時点で目途がたっていない。いつ頃目途が立つのかもわからない」。

 議会が銃規制に向けたアクションを起こそうとしないことから、全米ライフル協会の発言力、そして同協会から議員に対する政治献金の大きさが明白となった。協会は武器所有の法的権利を支持する議員に対し、その支持を続けるよう献金を渡しており、協会への忠誠心が試されるような事態は避けたいという議員らの思いが透けて見える。

 クリス・コリンズ下院議員 (共和党・ニューヨーク州) はラスベガスの事件を受けての銃規制強化は必要ないと言う。「我々は何かが起こるたびに思慮のない反射的な行動を起こすようなことはしない」。

 4年前にコネチカット州ニュータウンの小学校で銃乱射事件が発生した後には、銃購入時の身元確認強化を求める超党派法案が上院で審議されたが否決された。

 様々な事情が交錯する銃規制政策だが、このことを最も理解しているのがウエストバージニア州出身のジョー・マンチン上院議員だ。マンチン氏は民主党所属の議員で、2018年の中間選挙にもドナルド・トランプ大統領が圧倒的な力を持つウエストバージニア州での出馬を表明し、再選を目指している。

 マンチン氏は否決された身元確認強化法案の提案者のひとりだ。今月3日には「私は銃が広く使用されている州の出身で、憲法修正第2条に定められる武器所有の権利を支持している。だから武器所有擁護派が抱く危惧も理解している」と発言した。

 マンチン氏はまた、ウエストバージニア州の住民は「家族でハンティングに出かける(中略)スポーツ射撃を楽しむなど、あらゆる娯楽を認めるものとして、その権利を大切にしている」と述べた上で、良識に基づいた法律を制定すべきだとした。

 マンチン氏は「例えば飛行機への搭乗を認めるには危険性が高いとして、搭乗拒否リストに載せている人物に対し、懸念を抱き、国内における銃の購入も禁止すべきではないかと問うこと、これが良識だ」と言う。そしてこの問題に対する取り組みが行われるか否かは、トランプ大統領にかかっているとした。

「大統領ならその取り組みを先導できるだろう。彼なら実現できるはずだ」とマンチン氏は述べている。

 トランプ大統領は、1日夜に野外音楽フェスティバルで発生した銃撃事件を「極めて邪悪な行為」とし、国を挙げて生存者を支援すると表明した。

 トランプ大統領は3日に、「銃規制法についてはいずれ話し合う」と発言。サイレンサー購入緩和法案について問われると、「後に議論する」と答えた。

 民主党は対応を強く求めている。

 ジュディ・チュー下院議員 (民主党・カリフォルニア州) は「頻発する銃撃事件を阻止し、これ以上アメリカ国民が殺害されることがないよう措置を求めることは、「政治的行動」ではない。人として当然の義務だ。何もアクションを起こさないというのは、政治的判断だ」とツイッターに投稿した。

 チャック・シューマー上院少数党院内総務 (民主党・ニューヨーク州) は、共和党が支持するサイレンサー購入緩和法案は、悲惨な結果を招く恐れがあると警鐘を鳴らした。

 シューマー氏は上院の議場で「警察が銃撃犯の居場所を突き止める手段はほとんどなかったが、その中で警察は銃声を頼りに、それがどこから聞こえるのか突き止めようとした」と語り、「下院での法案審議が見送られたことに感謝する」と述べた。

 シューマー氏を始めとする民主党議員は、共和党が今年6月に議員チームで野球の練習中だったスティーブ・スカリス氏 (共和党・ルイジアナ州) らが狙撃された事件を受け、サイレンサー購入緩和法案の公聴会を延期したことを指摘する。

「このような大規模銃撃事件を受け、事件の検知と阻止を困難にする法案の審議を2度も見送らざるを得なかったのだから、法案成立をきっぱりと諦めるべき時が来たということだ」とシューマー氏は言う。

 共和党下院指導部はサイレンサー購入緩和法案の他にも、銃を他人から見えないように携帯する許可証 (concealed-carry permit) を持つ人が他州へ武器を持ち込むことを認める法案の制定を進めていた。この法案の是非を問う投票についても、実施の見通しは立っていない。

 リンゼー・グラム上院議員 (共和党・サウスカロライナ州) は「何が起こったか明らかにし、起こったことに対する措置を検討する上で、たった一度の法改正で問題を解決できると言う間違った期待感を国民に与えないようあらゆる可能性を柔軟に考慮したい」と自身の姿勢を示した。

By MATTHEW DALY
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP