日米2プラス2 垣間見えた対北朝鮮政策に対する米政権の足並みの乱れ

出典:外務省ホームページ

 17日に開かれた日米安全保障協議委員会(2プラス2)で両政府は、同盟関係を強化する方針で一致した。核武装を進める北朝鮮への対処が念頭にあるが、武力行使の是非を巡り米政府内でも足並みが乱れているようだ。北朝鮮への経済制裁については、従来非協力的だった中国の出方も注目されている。

◆核ミサイルの脅威を前に他国との連携を探るアメリカ
 ワシントン・ポスト紙(17日)によると、今回の2プラス2でアメリカ側からはティラーソン国務長官とマティス国防長官が出席し、日米の同盟関係を強化する方向で日本側と一致した。両氏は北朝鮮への政治的・経済的圧力を強める一方で、軍事行動も選択肢としてあり得ると認識しているようだ。同紙は「(アメリカを攻撃可能な北朝鮮のミサイルは)大統領として看過できない」とする米国家安全保障担当補佐官のコメントを掲載している。北朝鮮はグアムへのミサイル発射を一時公言しており、アメリカ国内には相当な危機感が広がっている模様だ。

 こうして高まる緊張の中、英紙フィナンシャル・タイムズは、日本との共同戦線を張りたいという思惑がアメリカ側にあると読む。ティラーソン、マティス両氏は2プラス2の日本との共同記者会見の場で、記者たちを前に日本との相互防衛協定を称賛した。急速に進む北のミサイル開発を受け、同盟国との関係強化を急いでいると同紙は見る。日本は脅威を囲い込む国際線戦の一員として期待されているようだ。

◆軍事的圧力の是非を巡りアメリカ国内でも意見が割れる
 トランプ大統領が攻撃の「脅威」に即座に対応するとする好戦的な姿勢を表明する一方、ホワイトハウス主席戦略官のバノン氏が軍事行動という選択肢を除外して考えるべきだと主張するなど、米政府内でも主張が分かれている。ワシントン・ポストによると、北朝鮮への物理攻撃に踏み切ればソウルで1000万人規模の死者が出るとバノン氏は見ているようだ。韓国側も懸念を示しており、軍事行動には米国外からも否定論がある。

 2プラス2参加の両名は武力を後ろ盾とした政治・経済面からの圧力を掲げているが、この方針に関する評価は米メディアでも分かれている。少なくともワシントン・ポストは、トランプ氏とバノン氏の双方の顔を立てたいわば苦肉の策と見ているようだ。同じ米紙のウォール・ストリート・ジャーナルがティラーソン氏のアプローチを「大統領も支持している」とあたかもティラーソン氏自身の案であるかのように表現しているのとは対照的だ。政府内に混乱があるほか、米メディア間でも解釈が分かれているようだ。

◆国際社会は中国の行動に期待
 平和的解決手段としては、中国に強い期待がかかる。国連安保理で経済制裁が決議された後も、中国は一部を除き貿易を継続してきた。フィナンシャル・タイムズによると、中国は北朝鮮が行う貿易の実に90%を占めており、国際的な経済制裁の輪に加わるよう関係国は望んでいる。今回の2プラス2でも、中国の協力で北朝鮮を交渉のテーブルに着かせたいとする考えで日米双方が一致した。

 中国も全く無関心というわけではない。ウォール・ストリート・ジャーナルでは、中国側が禁輸措置を強化したことをきっかけに北朝鮮がグアムへのミサイル発射を中止する発表をしたとして、功績を一部認めている。しかしワシントン・ポストの報道によると、北朝鮮の経済的パートナーとしての立場を崩さない中国に対し、トランプ氏は失望を表明しているようだ。同紙によると、反軍事を標榜するバノン氏は、中国への貿易制限発動をちらつかせている。こうした圧力を通じて中国から北朝鮮への経済交流を中止させるアプローチも検討されているようだ。

 2プラス2では、政治的・経済的圧力に軍事的後ろ盾を持たせる方針で落ち着いた。有事への発展を避け、経済的交渉で事態を治められるかが問われていると言えるだろう。

Text by 青葉やまと