議員の二重国籍問題、豪で2人が辞職 国籍で国への忠誠心は測れるのか?

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 蓮舫民進党代表の二重国籍問題が日本でも話題となったが、オーストラリアでは、野党の上院議員2人が二重国籍であったことが判明し、いずれも議員を辞職した。豪憲法では二重国籍者が連邦議員となることは禁止されおり、両議員の辞職は移民の国オーストラリアを揺るがしている。

◆うっかりでは済まされない。二重国籍での出馬は違憲
 豪憲法44条では、「外国への忠誠、服従、支持を認める」場合、または「外国の国民または市民である場合、外国の国民もしくは市民としての権利や特権を有する場合」は、連邦議員選挙に出馬することはできないと定められている。

 この規定を満たさなかったことで、最初に議員を辞職したのは、豪緑の党のスコット・ラドラム氏だ。ウエスト・オーストラリアン紙によれば、同氏は3歳の時にニュージーランドから豪州に移住し、10代で豪市民権を獲得。過去9年間に渡り上院議員を務めてきたが、憲法に強い関心を持つ人物から二重国籍ではないかとの指摘を受け、調査したところニュージーランド国籍を有していたことが判明したという。同氏は豪国民となった時点で自動的にニュージーランド国籍を失ったと思っていたとコメントしているが、避けられた見落としであったと非を認めている。

 次に辞職したのは、豪連邦議会で自分の子供に母乳で授乳をした初の議員となり話題となったラリッサ・ウォーターズ氏だ。1977年にオーストラリア人の両親のもとカナダで生まれた同氏は、生後11ヶ月で豪州に戻ったが、生地主義で自動的に与えられたカナダの市民権を放棄する手続きを取らなかったため、二重国籍のままであることが判明した(グローブ・アンド・メール紙)。

 ラドラム、ウォーターズ両氏は、緑の党の共同副代表を務めており、シドニー・モーニング・ヘラルド紙(SMH)によれば、最も将来性があり、支持者から愛される政治家だったため、党にとっては大きな打撃となったようだ。

◆時代にそぐわない憲法でも改正困難。規則は守るしかない
 両氏の辞任には賛否両論があるが、『news.com.au』の国内政治編集者、マルコム・ファー氏は、憲法44条 が19世紀の懸念を反映した古風なものであることが問題だとし、なぜ幼いときに豪州に移住した人々を、大人になって「外国のスパイ」と見なさなければいけないのかと疑問を呈している。同氏によれば、豪州の2300万人の人口の多くは移民によるもので、二重国籍者は推定600万人いるということだ。

 SMHのアダム・ガートレル氏も、そもそも憲法44条は、建国間もない豪州が外敵の侵入を避けるために作ったもので、人種のるつぼとなった現代にはそぐわない過ぎし日の遺産だと述べる。同氏は、他国の市民権を放棄することが、その国への忠誠を真に放棄することにはならないと述べる。またホームグロウンテロが証明するように、豪州で生まれたからといって必ずしも国に忠誠を誓うとは言えないと述べている。

 もっともファー氏は、「1国1投票権」の原則を憲法は支持しているとし、もし豪連邦議員が別の国の選挙で投票できるのであれば、それは明らかに問題だと述べる。また、市民権とは個人の財産であり共有できる産物ではないとし、だからこそ政府は豪市民権の取得を難しくし、その価値が高まっているのだと主張する。44条の改正も可能だが、それには多額の費用がかかる国民投票が必要であり、有権者が重国籍の議員を作るためにそれを許すとも思えないと同氏は述べ、必要なのは立候補する側の国への一定の忠誠心と、事前の出馬資格の確認ではないかと述べている。

◆国際化の影響で日本でも増える二重国籍者
 厚生労働省の人口動態統計によれば、日本の国際婚姻件数は平成27年で2万件を超えている。これらの夫婦に子供ができれば、その子供達の多くは、二重国籍となるだろう。その他にも、生地主義の国で生まれるか、大人になって海外で市民権を取得すれば、二重国籍となる場合もある。夕刊フジによると、日本の二重国籍者は40万~50万人と推定する専門家もいる。政治家の二重国籍問題は今後も出て来る可能性が高く、日本も国政選挙出馬における重国籍の扱いを、明確にすべき時なのかもしれない。

Text by 山川真智子