日本の腐敗指数72、アジアで3番目に健全 腐敗がポピュリズム生む、国際NGO警告

 国際NGO、トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)が、世界176ヶ国を対象にした2016年腐敗認識指数を発表した。各国の指数から読み取れるのは、組織的腐敗と社会の不平等には高い関連性があるということで、昨今のポピュリスト政治家の台頭にも影響しているようだ。報告書は、世界の人々の生活の質を向上させるためにも腐敗撲滅は急務だと訴えている。

◆腐敗は世界に広がる。気になる日本の順位は?
 腐敗認識指数は、世界のビジネスマンと各国の専門家が認識する公共セクターの腐敗の度合いを、国際比較しランク付けしたもので、複数の機関からデータを収集して編纂している。0(非常に腐敗していると認識)から100(とてもクリーンと認識)までのスケールがあり、2016年は全体の69%が50以下となり、世界的に腐敗が深く広くはびこっていることが示された。

 世界一腐敗の少ない国とされたのは、デンマークとニュージーランド(ともにスコア90)で、以下フィンランド(89)、スウェーデン(88)、スイス(86)、ノルウェー(85)、シンガポール(84)、オランダ(83)、カナダ(82)、ドイツ(81)、ルクセンブルグ(81)、イギリス(81)と続く。もっとも腐敗しているとされたワースト3は、ソマリア(10)、南スーダン(11)、北朝鮮(12)だった。その他、香港15位(77)、アメリカ18位(74)、日本20位(72)、中国79位(40)となっている。

◆腐敗と不平等の悪循環。格差は広がるばかり
 報告書のなかでTIは、腐敗と不平等は互いに補強し合う関係で、腐敗、力の不平等な分配、富の不平等な分配の間で悪循環が生まれる、と述べる。パナマ文書が示すように、金持ちと権力者が公の利益を犠牲にし、自らを富ませるために不透明なグローバル金融システムを悪用するのはいまだにたやすい、としている。

 TIのホセ・ウガツ会長は、世界には腐敗により基本的な生活必需品さえ手に入れられず、空腹のまま毎晩眠りにつくたくさんの人々がいる一方で、権力者や汚職に手を染めたものが、罪を逃れてぜいたくな暮らしを楽しんでいると批判する。そして世界の人々の暮らしを改善するため、腐敗と戦うことは急務だと述べている。

◆トランプ大統領で腐敗が増大?アメリカの民主主義も弱まる
 TIはまた腐敗がポピュリズムの台頭に寄与していると指摘する。腐敗と戦うと約束しながら何もしてこなかった政治家たちに嫌気がさした人々が、システムを変え、腐敗と特権のサイクルをぶち壊すと約束したポピュリスト政治家に向かっていると説明する。ここで注目されるのが、ドナルド・トランプ米大統領だ。APによれば、TIのリサーチ・ディレクター、フィン・ハインリッヒ氏は、トランプ氏が行っているのは「縁故主義」で、政権の閣僚たちは利益相反の状態にあり、透明性のため立ち上がるメンバーではないと述べ、TIとしては事態を静観しつつも、トランプ政権には深刻な懸念を持っていると語っている。

 ウガツ氏は、ポピュリストや独裁者のリーダーのもとでは、しばしば民主主義は衰退し、市民弾圧、報道の自由の制限、司法の独立の弱体化などが見られ、より悪い状況を生んでしまうと警告。言論の自由、政治プロセスの透明性、強い民主主義制度が、腐敗撲滅には不可欠だとしている。

 CNBCによると、英誌エコノミストの調査部門であるエコノミスト・インテリジェンス・ユニットが発表した今年の民主主義指数では、アメリカは「完全な民主主義国」から「欠点のある民主主義国」に降格したという。もっとも、CNBCは、アメリカの民主主義には数年前からほころびが見え始めていたとし、この結果をトランプ大統領のせいにはできないと述べている。そして2016年に大統領選がなかったとしても同じ結果であっただろうと述べ、責めるべきは低下する政府への信頼、議員、政党だとしている。

◆腐敗は国境を越える。国別ランキングに意味なし?
 腐敗撲滅のために今すぐ必要なのは広がりつつある権力と富の不均衡を正す改革であり、それは、腐敗の見逃しをやめさせ、力を持つものに責任を負わせ、生活に影響する決定に発言権を持てるよう、市民に権限を与えることだとTIは述べる。

 一方で、租税回避や脱税などの調査分析を支援する英「タックス・ジャスティス・ネットワーク」のアレックス・コバム最高責任者は、腐敗認識指数がグローバルな腐敗の背景を歪め、誤りを伝えるものだと批判する。同氏は、グローバルな腐敗を主に牽引するのは、いまや財務上の秘密保持をベースにした国境を越えた腐敗だという。資産はく奪(経営不振の会社を低評価で買収し、その資産を後に売却し利益を得ること)や国境を越えた利益の移動などに加担するシンガポールやスイスなどの国々は責任があるにもかかわらず、ランキングではクリーンな国として上位に入っていると断じ、指数の信頼性に疑問を呈している(ガーディアン紙)。

Text by 山川真智子