海自、比軍と南シナ海で合同演習 米豪らと合同パトロールする前兆?米メディア推測

 海上自衛隊が23・24日の2日間、南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島近くの公海上空で、P3C哨戒機を使ったフィリピン海軍との合同演習を行った。

 中国、フィリピンなどが領有権を争うスプラトリー諸島では、中国が岩礁を埋め立てるなどして“人工島”を建設するなど、一方的に軍事基地化を進めている。今回の演習はそれに対する牽制だという見方も強く、中国外務省は地域の安定を脅かす行為だと懸念を表明した。海上自衛隊とフィリピン海軍は、演習の内容はあくまで人道支援を目的とした「行方不明船などの捜索救助訓練」だったとしている。

 一方、APは、日本が近い将来、南シナ海でアメリカやフィリピンと合同で中国海軍の動きを監視する哨戒活動を行う可能性があると指摘。今回の演習はその前兆ではないかと報じている。

◆自衛隊のP3Cが中比の争う公海上を飛行
 初の日比合同演習は、スプラトリー諸島に近いフィリピン西部のパラワン島を拠点に行われた。海上自衛隊からはP3C1機が参加し、同島約90km北方の公海上空をフィリピン海軍の小型哨戒機と共に飛行した。現場は、中国やフィリピンが豊富な天然資源を巡って領有権を争う「リード・バンク」の方向だったが、AFPによれば、両国当局はその上空を直接飛んだかどうかについては明言を避けた。

 P3オライオンは米軍も使用する大型哨戒機で、演習に参加したP3Cは対潜水艦哨戒能力を高めたバリエーションだ。ただし、フィリピン側の指揮官、ジョナス・ルマワグ大佐は「我々が行ったのは、あらゆる人道支援と災害対応作戦に不可欠な捜索救助活動の訓練だ」(ロイター)と記者団にコメント。両国は共に、軍事目的ではないことを強調した。P3Cにはフィリピン海軍の将校3人が同乗し、同機の高い哨戒能力を目の当たりにしつつ作戦プロセスを共有した。

 これに対し、中国外務省は23日の定例記者会見で、「問題になっている勢力(日本とフィリピン)が、故意に騒ぎたて、緊張を作り出す事がないよう望む」と、報道官のコメントを通じて懸念を表明した。さらに、両国が「その反対ではなく、地域の平和と安定に貢献することを望む」と牽制した。中国国営新華社通信も、演習は日本の「干渉」だと非難した(ロイター)。

◆日米豪比などの「合同パトロール」が数年内に実現?
 APは、今回の訓練は小規模なものだったが、「南シナ海の支配を巡る争いへの日本の参入」という大きな事柄の前兆になるかもしれない、としている。さらに踏み込んで、数年内にアメリカ、日本、オーストラリア、フィリピンなどによる南シナ海の「合同パトロール」が実施される可能性もあると記す。

 米太平洋艦隊のハリー・ハリス司令官は先日、日本メディアに対し「P3は南シナ海のパトロールに最適だ」と述べている。APは、ハリス司令官は「日本が地域の安全保障により大きな役割を果たしたがっていることを歓迎している」と記し、オーストラリアなどの他の同盟国も同様だとしている。そして、今回の演習は、中国の人工島建設に対するアメリカの非難と「表裏一体」なものだとし、中国への軍事的な牽制の意味も込められたものだと見ているようだ。

 政策研究大学院大学の防衛専門家、道下徳成氏はAPに対し、「数年内に日本が南シナ海でアメリカ、オーストラリア、フィリピンなどと合同で哨戒・偵察活動をするのが見られるだろう」とコメントしている。ただし、同メディアは、それを実現するためにも与党は安保関連法案の今夏の成立を目指しているが、野党や国民の反対が強いとも指摘。「合同パトロール」の実現については、慎重な見方をしている識者も多いとしている。

Text by NewSphere 編集部