沖縄知事、辺野古移設作業の中止指示 日米関係悪化の可能性を英紙指摘

 沖縄の翁長雄志県知事は23日、名護市辺野古に建設が予定されている米軍飛行場のための調査を中止するよう指示した。県知事は、工事を監視する沖縄防衛局が、調査中止の判断をするかどうかに関わらず、海域の掘削許可を数日以内に取り消すとしている。これに対し、政府は、計画を予定通り進める意向だ。海外各紙は、中央政府と地方沖縄の対立が深まる現状を報じている。

◆法廷での争いに発展か
 米軍キャンプシュワブの飛行場は、辺野古の海兵隊基地の近くに建設する予定で、計画されている2つの滑走路の一部は、珊瑚礁の生息する大浦湾につき出して建設される予定だ。しかし、地域の反対により、計画が数年間遅れている。

 翁長県知事は、工事を許可した区域外の岩礁が損傷を受けていると報告があったとしている。そのため、防衛省による滑走路建設のための地質学調査を1週間以内に中止するようにと指示した。それができなければ、海での掘削作業を認めないとし、期限を過ぎて調査を続けることは、違法だと主張した。そして、もし、許可が取り消されたあとも調査が続けられるようであれば、法廷で争うことも考えていると述べた(ニューヨーク・タイムズ紙(NYT))。

 菅義偉官房長官は、翁長氏の命令について、「甚だ遺憾だ」とし、「計画の変更はない。粛々と進める」(NYT)と、今後も調査は続けられるだろうと述べた。

◆現地の反対運動は拡大
 翁長氏は2014年11月、建設中止を公約にして県知事選に勝利したが、今までは、特に明確に反対する行動を示さなかった(ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ))。ところが今回、同氏は、「腹を決めた」、「そういった事態になった場合は、粛々とさせていただきたい」と立場を明言し、「政府は一貫して『沖縄県民に理解を求めながら粛々と』としているが、大変不十分ではないか」(NYT)と、政府を批判した。

 地域の反対運動は、キャンプシュワブの工事現場の外で、比較的冷静に行われているようだ。しかし、平和的な抗議行動が続いてはいるが、ここ数ヵ月間で規模は次第に拡大し騒々しい様相になってきた、とNYTは現地の状況を報じる。琉球新報によると、2月には、少なくとも2000人が参加し、うち3人が拘留された。

◆日米同盟に必須、と政府
 議論のもうひとつの側面は、保守派の安倍晋三首相が、日本とアメリカの防衛上の結び付きを強めようと模索していることだ、とNYTは指摘する。安倍首相は、基地移設の計画を進めようと、前任者より明確な意思表示をしている、と報じている。

 知事の最後通告は、基地移転問題に関する、政府と地方との法的な争いを引き起こすかもしれない。そしてまた、日本とアメリカの関係悪化の可能性もある、と英紙ガーディアンは今後問題が複雑化する可能性を指摘した。

 アメリカは1945年から、沖縄に米軍基地を置いている。普天間基地は、周囲に住宅が密集していて、長年危険性が指摘されていた。1996年、日米は普天間基地の移設に合意。しかし、環境問題やその他の不安から、計画は遅れ、変更を繰り返しているため、米政府の不満は募っている、とNYTは報じている。

 米国防省関係者によると、少なくとも86億ドル(約1兆300億円)の費用がかかるとみられる新基地は、中国の軍事費の増強、北朝鮮の核開発への不安が募る中、米政府の構想するアジア太平洋地域の戦略的枢軸として不可欠なものだという(ガーディアン)。

 WSJは、安倍政権は、地方の反対にも関わらず建設を前にすすめると誓った、と報じ、新しい施設は、日米の同盟関係に欠かせない重要なものだと考えているからだ、と説明している。また実際、沖縄が長年、米軍のアジア太平洋地域の戦略的要として機能してきた、としている。

Text by NewSphere 編集部