「政治とカネ」政争への解決策:クラウド政治資金透明化PJの可能性
なぜ“政治とカネ”の問題は繰り返されるのか。なぜそれが国会をマヒさせるのか。不祥事はすぐニュースになるのに、良い政治家の情報がなぜ伝わらないのか…。 NewSphere編集部では、こうした問題を解決するための活動を報じていく。今回は、「政治資金透明化プロジェクト」に取り組む、 NPO法人ドットジェイピーの関信司氏に寄稿いただいた。
◆”政治とカネ”の問題の本質とは何か?
昨今の“政治とカネ”をめぐる問題は、与党の閣僚から安倍首相、民主党の岡田代表にまで飛び火し、政界全体のモラルが疑われる事態にまで発展した。新聞の政治欄には連日“政治とカネ”のスクープ記事が踊り、その度に“政治家はお金に汚い”という先入観が着実に植えつけられていく。
政治とカネの問題の背景には、メディアの閣僚に対する徹底した調査と、そのネタを政争として利用する野党の戦略がある。実際、安倍政権に対する“政治とカネ”のネガティブキャンペーンは功を奏し、内閣支持率が NHKの世論調査で8ポイント下がったとの報道がなされた。
しかし、一国民として、これらの国会の論争はワイドショーのネタとしては目新しくもなく、与党ではなく政界全体への信頼を大きく損なうものであると感じている。
実際の政治家の方とお会いすると、正義感が強く本気で国や地域のために仕事をしている人も多いと感じるが、このギャップを政治家自らが作り出していると考えると実に皮肉だ。
実は、“政治とカネ”の問題が過去に浮上するたび、より厳しい形で法改正がなされてきた。そのため、少なくとも収支報告書に計上されている内容は、年々極めてクリーンになってきているともいえる。しかし、いわゆる“抜け道”も同時に作られるため、抜本的な解決はなされていないのが現状だ。
この問題の本質には、もちろん政治家のコンプライアンス意識にも問題があるのだが、法整備と公開制度という意味で問題の解決策を探ってみたい。“政治とカネ”の問題を根本的に解決するには、大きく2つのアプローチがあると考えられる。
◆企業団体献金は本当に悪なのか?
まず一つは、政治資金パーティーを含めた企業団体献金の全面的な禁止だ。
現在日本の主要な政党は、企業、労働組合、宗教団体、共産党員により支えられている。企業団体献金を禁止した場合、政党は税金である政党助成金が座席数に応じて分配される形で運営されることになるため、政党間の競争は一見フェアとなる。
しかし、合法な献金が違法性を帯びることで裏金となって新たな問題に発展する可能性は拭えない。
また一方で、相対的には企業や労働組合から支持を受けている自民党や民主党の力が弱まり、機関紙販売という実質的な個人献金で支えられている共産党が力を増すことになるだろう。
ただし、これは賛否が分かれる問題でもある。そもそも企業や団体からの献金は悪なのか?という倫理的な問題でもあり、何らかの団体が自らの利益のために法に則った献金を行うことは、民主主義の精神に何ら反するものではないともいえるからだ。
とはいえ、自民党が多数派を占めるうちは、企業からの献金を禁止する法案が可決される可能性は極めて低いだろう。
◆政治資金の透明化が日本の政治を変える。
もう一つの解決策は、限りなく政治資金に関する情報を透明化することだ。
現在の制度では、政治家は政治団体を多数設立することが可能なため、政治資金の全体像が把握しにくい仕組みとなっている。企業献金や政党助成金の受け皿となる政党支部や、議員が代表を務める資金管理団体、さらには地元の後援会などがあり、それぞれの団体間での資金移動は自由なのに対し、会計報告は別々に行われている。
また政治団体は、年間単位で政治資金収支報告書を所管の総務省か選挙管理委員会に提出しているが、それらの報告書をインターネットで公表しているのはそのうちの半分にも満たず、現地で公開請求をする必要があるのが現状だ。
これらはシステム化の余地が大きく、電子データとして公開すれば収支の連結や違法性の確認などが容易に行えるようになる。
今国会では、補助金を受けた企業からの献金が問題視された。これも、補助金を受けて献金ができない企業をデータベース化して、政党へ情報提供することができれば、事前の確認や責任の範囲を明確にすることが可能になるはずだ。
◆「クラウドで政治資金の流れを透明化」プロジェクト
NPO法人ドットジェイピーでは、政治団体の会計処理をクラウド会計を介して行い、収支報告の情報をオープンデータ化させる構想を企画している。 3月16 日には Google社が主催するGoogleインパクトチャレンジにおいて同団体の「クラウドで政治資金の流れを透明化」プロジェクトがファイナリスト 10組に選出された。
このプロジェクトは政治家の意識改革と会計業務の合理化を行うと同時に、有権者に対して政治への関心と理解を促すことを目的としている。 25日までの一般投票に勝ち残れば、政治とカネの問題に一石を投じることができると考えている。
※参考サイト
Googleインパクトチャレンジ投票サイト
政治資金透明化プロジェクト紹介ページ
※Googleインパクトチャレンジについて
Googleインパクトチャレンジは、 Googleが主催する、非営利団体向けの支援プロジェクトです。日本国内の非営利団体を対象に、テクノロジーを活用して、よりよい社会を作るアイディアを募集。審査で選ばれた 10組から一般投票を行い、投票結果と審査から上位4組に 5000万円の助成金と、Google社員による技術アドバイスが提供されます。
著者:関信司 NPO法人ドットジェイピー メディア事業部長