中国が日本の安保政策・自衛隊観を変えた “最大の不安要素”を海外識者が分析

安倍首相・習主席

 内閣府は7日、3年ぶりに行った「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」の結果を発表した。調査は、1969年から行われている。今回は、1月8日から18日にかけ、無作為に選んだ3000人に対して実施され、56%にあたる1680人から回答を得た。

◆自衛隊の活動と中国軍の近代化
 調査によると、自衛隊について、回答した人のうち59%が現在の状態が適切だと答えた。3年前は60%、これまでで最も高い数字を示したのは、2006年の66%だ。約30%が自衛隊を強化すべきと答えたが、前回の調査では、25%だった。2009年と比較すると約2倍の数字だ。

 日本の防衛に関して、何に関心を持っているか複数回答で尋ねた質問では、「中国の軍事力の近代化や海洋における活動」と答えた人が60.5%と前回の46%から増加した。一方、北朝鮮については、65%から、53%に減少。国際的なテロ活動については、30%から43%に増加した。また、日米の防衛協力への支持は、83%と最高を示した。

◆自国防衛を模索する日本
 中国との領土問題への対応、東日本大震災での活動などで、より多くの日本国民が自衛隊に感謝している。しかし、これは、安倍晋三首相が目標としているより大きく強い軍隊を、人々が望んでいるという意味ではない、とウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は報じている。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、現在の日本の状況について、「国家主義者である安倍晋三首相のもと、最近では記憶にないほどの、大掛かりな防衛方針の徹底的な見直しを始めた」、と報じる。そして、「積極的平和主義」を掲げ、10年間減少し続けていた防衛予算を増加に転じただけではなく、自衛隊の活動に関する制限緩和も進めている、と否定的な論調で伝えている。

 米外交問題評議会(CFR)日本担当非常勤シニア・フェローのシーラ・A・スミス氏は、「中国が台頭してきたからには考え方を改めるべき」と日本は考えており、「戦後初めて、日本は自分たちが前線に身を置いていることに気づいた。そして初めて、自立した防衛計画とはどんなものなのか?と自身に問わなければいけなくなっている」と日本が防衛について模索中であると指摘している(NYT)。

◆中国、経済的優位を背景に軍事力強化
 インターナショナル・ビジネス・タイムズ紙(IBT)は、中国との関係について、日本人がますます過敏になっている、と報じた。中国の軍を使っての高圧的な姿勢は、継続しさらに強まり、地域の地政学上中国を重要な国としているが、日本にとっては、最大の不安要素だ、と同紙は指摘した。

 中谷元防衛大臣は6日、「中国では広範で急速な軍事力の強化が推進されているものと認識している。また、依然として不透明な点が多く、具体的な情報開示を通じて透明性の向上を図るよう、国際社会全体で中国に働きかけていくことが必要だ」と述べた。

 ブルームバーグは、安倍首相が進める自衛隊の改革や海外派遣、防衛予算の増加は、ひとつには、強大化する中国軍に対抗しようとするものだ、としている。ウッドロー・ウィルソンセンターアジアプログラム北東アジア専門アソシエイトの後藤志保子氏は、「最近東アジアでは、緊張が高まっている。北朝鮮の脅威や中国の急激な軍国主義化によるものだ」と指摘し、「過去3年間で、防衛環境が変わった」(IBT)と日本を取り巻く状況について述べた。

 NYTは、中国による周辺海域を掌握しようと強硬な動きが、日本を平和主義という殻から外へ押し出した、と報じる。

◆軍備競争
 中国は2012年、空母を配備したが、日本が技術だけでなく、大型戦艦での経験においても、中国の10年先をいっている、とのアナリストの分析をNYTは取り上げた。

 ただし、現状は中国に有利だ、と同紙はみている。いまだに高い経済成長が、軍事費のさらなる増大を可能にしているからだ。日本の軍事予算は、2015年予算で2.8%増の4兆9800億円。中国政府の5日の発表では、中国の国防費は10.1%増の1450億ドル(約17兆6500億円)だった。

 復旦大学国際問題研究院の沈丁立(シェン・ディンリ)副院長は、「アメリカと日本が(軍事費を)増強すればするだけ、中国も増強する」(NYT)と競争に先が見えないことを示唆した。

Text by NewSphere 編集部