日本のサイバーセキュリティ、“特に脆弱” 米朝攻防のなか、海外メディア指摘

 ソニーの米映画子会社ソニー・ピクチャーズエンタテインメントは23日、一旦公開を中止するとしていた映画『ザ・インタビュー』について、規模を制限し公開すると発表した。24日には、同作品をインターネットで先行公開した。ソニーは、自称「Guardians of Peace(平和の守護者たち)」というハッキング集団に攻撃を受け、もし映画を公開すれば、上映を行った映画館が暴力的被害に遭うだろうと脅迫されていた。

 このような事件が度々起こる国際的現状から、日本政府も対策に動いているようだ。

◆日本の対策
 ソニーへのサイバー攻撃が公になる前から、日本はサイバースペースでの安全性・信頼性確保の強化をすすめていた。

 11月6日には、「サイバーセキュリティ基本法」が衆議院本会議で可決、成立した。この法案が国会で承認されたことで、国家安全保障委員会(NSC)は、サイバーセキュリティを監視するための、より大きな権限とさらなる法的根拠を得たことになる。また内閣に「サイバーセキュリティ戦略本部」を設置、NSCとより緊密な連携を図る。同戦略本部の管轄範囲は広い。情報分野での戦略的目標の設定、重要なインフラの保護、国民への注意喚起、研究・開発、情報の共有などだ。

 また、基本法は、サイバーセキュリティを改善するための国際的な取り組みの一環となっている、と米国防専門メディア『ディフェンス・ワン』は報じている。日本はこれまでにも、サイバーセキュリティに関して東南アジア諸国連合(ASEAN)と一連の会合を持っている。10月には初めて、欧州連合(EU)とも会合を持った。

 ロイターによると、安倍晋三首相は先週末、サイバー防衛の専門家や外交官、政策立案担当者らと協議を行った。電力やガスの供給、輸送網などの基本的な国の機能を、いかなるサイバー攻撃に遭っても維持するためにはどうすればよいか、話し合われたという。しかし、同メディアは、現状では、個人、あるいは、他国家によるハッキングの横行に政府が十分に対処できていないとも指摘した。特に、福祉サービスや医療施設、輸送・インフラ網などは、目立って脆弱だという。

◆アメリカ支持で拉致問題難航か
 アメリカ連邦捜査局(FBI)は19日、ソニーのハッキングは、北朝鮮によって行われた疑いがあると調査結果を発表した。菅義偉官房長官は22日、「日本は、アメリカと緊密な連携を維持している。この問題に関してアメリカの対応を支持する」と述べ、米政府とは情報を共有していると付け加えた。

 同盟国アメリカが、ソニーへのサイバー攻撃は北朝鮮によるものだと非難していることで、日本は、北朝鮮との外交が複雑になっている、と海外メディアは報じている。アメリカの主張を支持しながら、拉致問題解決のため、北朝鮮とも対話を続けなければならないからだ。菅氏は、日本がアメリカの発言を支持したことについて、拉致問題の話し合いに影響はないとしている。

◆情報が体制を脅かすという危惧
 『ザ・インタビュー』は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第一書記の暗殺計画を描いたコメディ映画だ。映画の内容から、サイバー攻撃を仕掛けたのは北朝鮮だとみられている。北朝鮮は、関与を全面否定している。

 アメリカはこのような脅迫に強い態度で望むという姿勢を示したが、報復は、既に実行されたのかもしれない、と米メディア『CNET』は推測した。これは、今週、北朝鮮のインターネットが数時間に渡りダウンしたことを指している。今のところ、この件の原因は明らかになっていない。

 ある文化圏、特に北朝鮮や中国では、情報を利用して国の首脳を批判・中傷することは、体制の安定を脅かすものとみなされる、とディフェンス・ワンは説明している。また、映画について、逆の立場になった場合、つまり、言論の自由が保障されているアメリカで作られた映画だとしても、北朝鮮がバラク・オバマ大統領を殺害する映画を作れば米国民は北朝鮮を非難するのは間違いないということだ。しかし、だからといって、映画公開を妨害するためにサイバー攻撃など行うべきではないことは明らかだ。

Text by NewSphere 編集部