民主党マニフェスト、“抽象的”と国内主要紙批判 海外メディアの注目度も低く

 民主党は24日、衆院選のマニフェスト(選挙公約)を発表した。「アベノミクス」との対決姿勢を強く打ち出したものだ。国内主要紙は、抽象的だと批判的に論じており、一部海外メディアは争点を紹介している。

◆「3本の矢」ならぬ「3本柱」を主張
 マニフェストの中核は、「民主党の経済政策3本柱」だ、とウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙ブログ「日本リアルタイム」は紹介している。民主党は、アベノミクスを「過度な金融緩和」「バラマキ財政」「一握りの企業だけに役立つ成長戦略」と評する。これに代わる「3本柱」は、「国民生活に十分留意した柔軟な金融政策」、「(子育て支援、雇用の安定など)人への投資」、「未来につながる成長戦略」である。

 24日のマニフェスト発表記者会見で、民主党の海江田万里代表は、「アベノミクスと安倍政治が続く先には、国民生活と日本経済の悪化、平和主義の空洞化、なし崩しの原発再稼動がある」「民主党なら、この流れをどう変えるかという政策をまとめたのがこのマニフェストだ」と語った。

◆アベノミクスは庶民の敵?
 海江田代表は、「アベノミクスによって国民生活は疲弊している」「アベノミクスをこのまま続ければ、働く人、年金生活者、学生から中小企業まで生活は苦しくなるばかりだ。この流れは変えなければならない」と語った。WSJ紙、および中国国営新華社通信がこの発言について触れている。

 マニフェストでも、アベノミクスは物価上昇や大企業への恩恵集中を招き、庶民を痛めつけるものと表現。「日本の社会を支える中間層を厚く、豊かにすること」を公約に掲げた。新華社通信はこれについて、無党派層の支持を得ることも狙いにしている、と報じた。

◆政策としての具体性に欠けると批判
 読売、朝日、毎日、産経の社説は、民主党のマニフェストについて、政策としての具体性に乏しい、という旨の指摘を行っている。

 朝日新聞は、「アベノミクス批判にうなずける点はあるものの、具体的な政策につながっていない」と指摘した。与野党の政策の「対立軸」は示されているものの、このマニフェストが、実効性をもつ「対案」と呼べるかと言えば、いささか物足りない、と語る。

 毎日新聞は、「厚く豊かな中間層の復活」など、マニフェストで主張されている格差是正は、選挙戦での与野党の対立軸となるが、このマニフェストでは、財政再建と成長戦略をどう実現していくかなどの肉付けに乏しい、と語っている。「総じて抽象的な記述が目立つ」としている。

 産経新聞は「日本経済が長年苦しんできたデフレからの脱却にどう取り組むかがみえない」と指摘している。公開されたマニフェスト(概要)には「デフレ」という語すら出てこない。

◆中国メディア、「集団的自衛権」に注目
 また新華社通信はマニフェストについて、アベノミクス批判と、集団的自衛権の行使を容認した閣議決定を撤回することに主眼が置かれている、と報じた。

 マニフェストでは、この閣議決定は「立憲主義に反するため、撤回を求める」とされている。新華社通信の報道では、民主党はこの閣議決定について、日本の平和主義に背くものであり、世論に関わらず、不評であり論議を呼ぶ閣議決定を行う「暴走した内閣」は正されるべきである、と発表したとされている。ただしマニフェストにはそのような文言は見られない。

 民主党は、安倍政権の取った“手続き”を争点化する一方で、集団的自衛権の問題そのものに対する姿勢をマニフェストで明らかにしていない。このことについても、国内4紙から一斉に問題を指摘されている。

 産経新聞は、「(民主党はマニフェストで)行使そのものの是非は明確にしていない。安全保障政策の核心部分で明確な見解を示せない政党に、国の安全を託せるだろうか」と問題を提起している。

 読売新聞は、民主党がマニフェストで行使容認の是非の判断は示さなかったことを、「責任ある対応ではない」と語った。さらに同紙は、「立憲主義に反する」という批判そのものが「的外れ」だとしている。

◆その他の争点
 その他の争点としては、今回のマニフェストで、民主党が2030年代での原発ゼロを目指すとしていたことに、WSJ紙と新華社通信は注目した。

 またWSJ紙は、民主党がTPPについて、農産物重要5品目の除外など、国益を確保するために、「脱退も辞さない厳しい姿勢で臨む」と表明していることも報じた。

 民主党が消費税率10%への引き上げを、期限を示さないまま、延期するとしたことについて、朝日新聞は「財政リスクから目を背けていると言わざるをえない」、毎日新聞は「財政健全化の手順を示さないのは無責任ではないか」、と厳しい視点だった。

 朝日新聞が22、23日に実施した世論調査で、比例区で民主党に投票すると回答した人は11%だった。この「わずかな」数字についても、WSJ紙と新華社通信はともに伝えている。

Text by NewSphere 編集部