日韓首脳“会話”が実現 「関係改善の良い兆候」と韓国識者が期待…孤立懸念か

 安倍晋三首相は10日、北京で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の歓迎夕食会で、隣席に座った韓国の朴槿恵大統領と会話した。両首脳が対話したのは、3月にオランダのハーグで行われた日米韓3ヶ国首脳会談以来、8ヶ月ぶりである。

◆サプライズディナー
 安倍首相は、夕食会の7時間前に、中国の習近平主席と初の首脳会談を行っている。何週間もの根回しの末に実現した日中首脳会談とは異なり、安倍首相が夕食会で朴槿恵大統領の隣に座れるよう特別に要請した事実はない。両首脳が並んで座ったのは、国名のアルファベット順に首脳の席が配置されたためだ。

 両首脳は、4月から開始された、慰安婦問題等を話し合う外務省局長級協議の円滑な前進を促すことで一致した、とロイターは伝えている。両国の共通の懸案である北朝鮮問題や世界経済についても話し合われた模様、と韓国英字紙『Korea Times』は報じている。

 安倍首相は就任以来、朴大統領との2ヶ国会談を要請してきた。韓国の聯合ニュースによると、夕食会の4日前にも日本からの会談要請があったという。

◆孤立化を恐れる韓国
 慰安婦問題解決が先決として、首脳会談を断り続けてきた朴槿恵大統領だが、安倍首相との「会話」が実現した背景には何があったのか。

『Korea Times』によると、韓国が北東アジア外交で孤立するのでは、との懸念が国内で高まっていたという。日中首脳会談が実現したことに加え、北朝鮮が拘束していた2人のアメリカ人を解放し、米朝関係改善の兆しがみられたことも影響している。

 夕食会で突然に実現した両首脳の会話は、「日韓外交が改善する良い兆候」と韓国側の識者は述べている、と同紙は報道している。

◆険しい日韓首脳会談への道
 安倍首相と朴槿恵大統領は、中国を皮切りに、ミャンマーやオーストラリアで開かれる一連の国際会議に出席するが、正式な首脳会談は予定されていない。

 冷え切っている両国の関係だが、ここ数ヶ月も溝が埋まる様子はない。韓国は、日本が長年の懸案である慰安婦問題を解決するべく努力するように要求している。一方日本は、前提条件をつけずに首脳会談を行うべき、との立場だ。

 日中首脳会談の実現により、朴槿恵大統領も首脳会談の席に着いてくれればと期待されているが、道は険しいようである、とWSJは結んでいる。

Text by NewSphere 編集部