小渕・松島両大臣辞任、海外紙は「ウーマノミクス」「原発再稼働」に暗雲と報道

 小渕優子経産相と松島みどり法相が20日、政治資金をめぐる疑惑等を受け、相次いで辞任した。ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)など主要な海外メディアは、安倍内閣の支持率低下は避けられないと、女性閣僚のダブル辞任を報じている。

◆「安倍首相が初めて直面する政治的危機」
 小渕氏は、関連政治団体が支援者向けに開いた観劇会で、会費収入より支払額が1300万円多かった点が問題視されている。会費の一部を肩代わりしたとすれば公職選挙法違反、記載ミスだとすると政治資金規正法違反にあたる可能性がある。

 さらに、自身が代表を務める資金管理団体が、親族が経営するブティックやデザイン事務所へ数百万円近い支出をした疑惑が持たれている。

 松島法相は、選挙区内の有権者に「うちわ」を配ったことが公職選挙法に抵触すると、民主党などから批判されている。

 フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、スキャンダルが持ち上がってから「たった数日後」の辞任となったのは、「2人とも安倍政権への影響を最小限に抑えようと考えたからだ」としている。

 しかし、「就任以来、比較的高い支持率を得てきた安倍首相が初めて直面する政治的危機だ」(NYT)、「女性の労働参加の拡大を推し進める安倍内閣にとって、大きな打撃となった」(ガーディアン)など、主な海外メディアはいずれも、打撃は小さくないと指摘する。
 
◆「ウーマノミクス」に影を落とした
 小渕氏については、各紙とも、今回のスキャンダル発覚までは日本初の女性首相の最有力候補だったと紹介している。FTは、母親業と大臣を両立する小渕氏は、5人の女性閣僚の中でも特に「ウーマノミクス」を象徴する存在だったと記す。

 各紙は、他の3人の女性閣僚をめぐるスキャンダルにも触れている。高市早苗総務相がネオナチのメンバーと、山谷えり子国家公安委員長もまた「ウルトラナショナリストグループの在特会のメンバー」(NYT)と一緒に写真に収まっていたことや、高市氏、山谷氏、有村治子女性活躍担当相が18日、揃って靖国神社を参拝したことが併せて伝えられている。

 ガーディアンは、これらは「働く女性の地位向上を目指す安倍首相の計画に影を落とした」と記している。

◆小渕氏辞任で原発再稼働にも暗雲?
 また、各紙が揃って指摘するのは、小渕氏が原発再稼働に向けたキーパーソンだったということだ。ガーディアンは「小渕氏の職務の一つは、原子力エネルギーは安全だと有権者、特に女性たちを説得することだった」と記す。

 後任は宮沢洋一氏(64)に決まっている。同氏は宮沢喜一元首相の甥だ。海外メディアは、「あまり知られていない政治家」(NYT)、フレッシュなイメージで支持を得てきた小渕氏とは対照的な「ベテラン」(FT)、と報じられている。ガーディアンは「原発再稼働に向けた動きに障害ができたかもしれない」としている。

 次の消費税引き上げについて決断を迫られている安倍首相にとっては、最悪のタイミングだったというのも、各紙の一致した見方だ。FTは、「経済再生で重要な局面を迎えている安倍首相にとって、(消費税問題と合わせて)ダブルパンチとなった」と辞任劇を表現。また、「消費税問題とダブル辞任は直接結びついてはいないが、安倍内閣の支持率は下がるだろう。マグニチュード7レベルの衝撃だ」という政治評論家・歳川隆雄氏のコメントを掲載している。

Text by NewSphere 編集部