安倍首相、常任理事国入りに意欲 “中国が最大の壁”と海外メディアは悲観的

 安倍首相は25日、国連総会で一般討論演説を行い、改めて日本の安全保障理事会の常任理事国入りに意欲を示した。首相は、今だ国連憲章の敵国条項の対象になっている日本やドイツが常任理事国として平和に貢献する「国連改革」を提唱。その新しい国連を「21世紀の現実に合った姿」と表現した。

演説が行われた国連本部がある米・ニューヨークの主要紙、ニューヨーク・タイムズ(NYT)をはじめ、各国のメディアも安倍首相の演説を報じた。しかし、日本の常任理事国入りついては、中国が強硬に反対するため無理だろうと、いずれも懐疑的だ。

【首相「国連を21世紀の現実に合った姿に」】
 国連は、1945年の第2次世界大戦終結直後に当時の連合国を中心に発足した。安全保障理事会の常任理事国は主要な戦勝国であるアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の5ヶ国だ。これに任期2年の非常任理事国10ヶ国を加えた15ヶ国が安保理を構成する。これは来年70周年を迎える国連の歴史で不変だが、21世紀に入り、かつて枢軸国側だった日本とドイツに、ブラジル、インドを加えた4ヶ国が常任理事国入りを目指し、「G4諸国」として歩調を合わせている。

 安倍首相は、こうした背景を前提に「国連を21世紀の現実に合った姿に改革し、その中で日本は常任理事国となり、それにふさわしい役割を果たしていきたい」などと述べた。また、NYTなどによれば、G4諸国の外相会合が同日開かれ、共に常任理事国入りを目指すことを再確認したとする共同声明を発表した。

 台湾の中国時報英語版は、アメリカの中国系ニュースサイトに掲載された首相の心情を代弁したコメントを紹介している。この「首相に近い人物」によると、「安倍首相が常任理事国入りに強い意欲を示しているのは、国連憲章が今だに日本やドイツを敵国として扱っていることに不満を抱いているからだ。それ故に、『21世紀の現実の姿に合った』という表現で改革を訴えた」のだという。

【中国の反対一つで常任理事国入りは不可能】
 日本が常任理事国となるためには、現在の常任理事国5ヶ国全ての賛成と、国連総会の3分の2の承認が必要だ。ただでさえ高いハードルだが、各国メディアは「中国は尖閣や歴史認識問題で今も日本に対する敵対的なスタンスを崩していない」(中国時報)、「アジア唯一の常任理事国である中国は、第2次世界大戦終結時のパワーバランスに基づいた常任理事国に日本が加わることに反対している」(AFP)などと、現状では中国が強く反対するのは確実だと論じている。

 シンガポールの英語放送局『Channel News Asia』も、中国1国の反対だけで日本の常任理事国入りは暗礁に乗り上げると指摘する。また、安倍首相は支持を取り付けるため、会期中にアフリカ諸国などとの会合を開く予定だとしているが、イスラム原理主義勢力のテロの問題やエボラ出血熱の流行など他に課題が山積している中で、「各国に安保理改革の話をする余裕があるかは疑問だ」とする専門家の意見を紹介している。

 日本は2016-17年の非常任理事国にも立候補している。中国時報はこちらの可能性は十分にあると記す。同メディアは、日本がライバルのバングラデシュに6000億円の支援を提示し、レースから脱落させたという中国系ニュースサイトの報道を引用している。

【中韓との関係改善にも意欲とNYT】
 安倍首相はまた、演説で「日本はこれまでも、現在も、これからも、積極的に平和に貢献する」などと、国際平和への積極的な貢献を強調した(NYT)。

 同紙によれば、首相は演説後の記者会見で、冷えきっている中国、韓国との関係についても「関係を向上させたい。両国はまさに隣国だからだ」と述べたという。11月に北京で開かれるAPEC会議の席での実現が取りざたされている中国の習近平国家主席と韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領との首脳会談についても、「粛々とした努力が必要だ」と前向きな姿勢を示した。

 また、安倍首相は「イスラム国」のテロなどで混乱する中東に向けた5000万ドルの人道支援と、エボラ出血熱対策に4000万ドルの追加支援を表明。ウクライナの安定のためにいち早く15億ドルを拠出したことも強調した(AFP)。

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Text by NewSphere 編集部