朴大統領の国連演説、日本批判は間接的 関係改善を意識か? 韓国紙も推測

 ニューヨークで開催中の国連総会において、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は24日、基調演説を行った。朴大統領は、「戦時下の女性に対する性暴力」について、時代や地域に関わらず人権に反する行為だと批判した。日本の「慰安婦問題」を念頭に置いているとみられるが、名指しでの批判は避けた。

【普遍的な人権問題として慰安婦問題を捉える演説】
 加害者として日本を名指ししていないことについて、朝鮮日報は、2国間における『もめ事』ではなく、『女性の人権』という普遍的な視点からのアプローチ、との見方を示した。

 同紙はまた、日韓関係改善への努力に対する考慮や、朝鮮半島の情勢等をめぐっての韓日米3国間の協力体制に対する悪影響への懸念も視野に入れた結果、直接的な批判とはならなかったと見ている。

 中央日報は、「具体的に『日本軍慰安婦』という表現を使わないのは日本の立場を考慮したもの」であるという政府当局者の発言を報じている。

 なお昨年の国連総会では、尹炳世(ユン・ビョンセ)外相が、日本の名指しは避けたものの、慰安婦問題への対応を求めるような演説を行っていた。

【日韓関係の悪化の原因は?】
 これまでのところ、朴大統領は日本との首脳会談を避け続けている。コリア・タイムス紙は、「ソウルには攻撃的国家主義と見える日本政府の方針変更」に対してのことであるという見解を示している。

 東アジア専門ジャーナリストのピーター・マクギル氏は、『East Asia Forum』への寄稿で、朴大統領の日本に対する強硬姿勢の背景を予測している。大統領の父である朴正煕元大統領に対しては、日本の植民地支配への協力で財と地位を得た、という批判が根強い。ここから国民の目をそらすため、反日本の立場を鮮明にしているとみられる。確かに、一方で、植民地時代に日本の財閥によって行われた強制労働に対する補償を求める動きは、現政権下では無視され、トーンダウンしていると氏は述べる。

【関係改善に向けての動きに期待】
 先週ソウルを訪れた森喜朗元首相には、朴大統領へ首脳会談を呼びかける安倍首相の親書が託された。

 朴大統領は、首脳会談の実現に向けて「日本による戦時性奴隷被害者問題解決のための誠実な努力」を要求している、とコリア・タイムス紙は伝えている。現在両国は「従軍慰安婦」問題の解決に向けて、月例の局長級協議を持つことで同意しており、19日には4度目となる対話が行われた。また、3月にはアメリカも含めた3国での首脳会談が実現している。

 岸田外相と尹外相との会談が26日朝に実施され、首脳会談実現、関係改善に向けての努力の継続で一致したと報じられている。

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Text by NewSphere 編集部