安倍・モディ両首相の「ブロマンス」(男の絆)、中国に見せつける意図も?

 インドのモディ首相は、8月30日から9月3日まで、日本を訪れた。その際に見せた、安倍首相との親密ぶりは、海外からも注目を集めた。いくつかの英語メディアは、2人の関係を「ブロマンス」(男同士の固い友情)と呼んだ。

【日印間の重要議題以上に目立った、両首相の「ブロマンス」】
「ブロマンス bromance」は、bro(ther)とromanceの合成語で、男同士の特に親しい友情を指すが、そこに性的なニュアンスはない。ウェブスター辞典(オンライン版)によると、初出は2004年。

 フォーブス誌によると、モディ氏がまだグジャラート州首相だった2012年に、日本を訪問した際に、2人の良好な関係が築かれた、と言われているという。今回の訪問でも、その絆の深さは、すぐに感じ取れるものだった、と伝えている。

 訪問中の会談では、両国間の経済協力と防衛協力が主要な議題とされ、新たな合意が多数結ばれた。訪問期間の長さと、安倍首相がモディ首相を迎えた際の厚遇ぶりは、日印関係の重要性を明確に示している、とフォーブス誌は語る。日本とインドは、経済と安全保障において共通の利害を持っている。しかし、今回の会合の親密さをかき立てたものは、個人同士の親近感だ、と述べている。

【「根本的な相似」によって2人は引かれ合う?】
 印英字紙『エコノミック・タイムズ』に掲載されたSwapan Dasgupta氏のオピニオン記事は、モディ首相のたっぷり5日間の日本滞在は、非常な成功を収めたものだった、と伝えている。その目指したところは、主に、製造業のハブとしてインドを売り込むことと、より広範囲な戦略的意見交換で両国を固く結びつけることだった。しかしながら、そこに特別の活気を付け加えたものは、政治的アプローチにおける、2人の根本的な相似だった、としている。

 同氏は、2人の「ブロマンス」な関係は、(単なる)通商上の関係を超える、と述べる。政治姿勢の共通点が、2人の絆を強化していることを論じようとしている。それは、大まかに言うと、西欧から押しつけられた政治秩序の再編成と、自国の伝統的価値観を復権させようとする、保守的・ナショナリスト的な挑戦だ。モディ首相と安倍首相はともに、西欧のリベラル勢力から、反動的指導者だと警戒されているという。

【実は中国との三角関係?】
 モディ首相の日本滞在時に、2人が示した親密ぶりは、単に2人の「ブロマンス」の発露だっただけではないようだ。エコノミスト誌は、それはある程度、日本とインドの間のラブコールが大きくなっていることの、中国に対するサインだった、と述べている。つまり、中国に見せつけるためだった、という面もあるというのだ。

 フォーブス誌によると、今回の訪問の2つの大きな議題のうち、安全保障問題では、とりわけ中国が両国共通の関心だったという。インドは、中国と国境を接しており、断続的に緊張が生じているという。しかし、日本もインドも、経済的には中国とも深い結びつきにあるため、あからさまに中国の不興を買うわけにもいかない。フォーブス誌は、両首相は、注意深く歩を進めなければならない、としている。

 エコノミック・タイムズによると、中国の国営メディアが、日印の「共同戦線」は、「台頭する中国政府に向かい合うことに不安を抱いた日本政府が生み出した、ばかげた夢想」だ、と評しているという。

 しかしエコノミスト誌は、中国は今のところは、インドと日本の関係について、大いに気をもむ必要はない、としている。首相同士のハグにもかかわらず、今回の訪問では、戦略的問題で大きな進展は何も生まれなかったからだ、と語っている。

 なお中国の習近平国家主席は、17日より、初めてインドを訪れる予定だ。

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Text by NewSphere 編集部