中国に対抗? 安倍首相スリランカ訪問で関係強化へ 巡視船供与など表明

 安倍首相は7日、スリランカのコロンボで、ラジャパクサ大統領と会談した。日本の首相の同国訪問は24年ぶり。先に訪問したバングラデシュとともに、中国との協力関係を強化したタイミングであり、海外メディアも注目している。

【中国の影響力に対抗する狙い】
 安倍首相の訪問は、中国の習近平国家主席の先手をとった形となった。習主席は、インド、スリランカなどへの訪問を11~19日に予定している。

 ドイツメディア『ドイチェ・ヴェレ』(DW)によると、中国は、コロンボの港湾ターミナル建設に5億ドル(約530億円)の融資を決めるなど、インド洋で影響力を増している。日本も、唯一の国際空港「バンダラナイケ国際空港」の建設計画に融資しており、中国とともに二大支援国家といえる。

 外交ニュースサイト『ディプロマット』は、日本はインド洋地域での中国の影響力に対抗するため、インドだけではなく、バングラデシュ、スリランカとの関係強化が重要だとする。

 なお中国国営新華社通信は安倍首相の訪問について、両国が海上警備、テレビの放送方式、農業、教育について合意した、と報じるに留まった。

【政治・経済両面での関係強化】
『ディプロマット』は、経済面での関係強化に注目している。今回の歴訪には日本のトップ企業幹部50人が同行し、バングラデシュの首都ダッカ、スリランカ最大の都市コロンボを訪問している。安倍首相は、関係強化し、活力を日本経済に取り込みたい、と経済面での重要性を強調した。今後、貿易面での関係強化も図りたい考えだ。

 両国の海上警備における協力体制も話し合われた。安倍首相は海上警備面での新たな協力体制を築くことを希望すると述べ、スリランカの海上警備力向上のために専門家を送り込むことを約束した。またスリランカの海上警備力の強化を目的に巡視船を無償供与する意向を表明した。ラジャパクサ大統領は、「両国は海洋国であり、海上における連携と警備が重要。緊密な連携を図ることができることを歓迎する」と述べた。

 両国は国連安全保障理事会改革を始めとする国際フォーラムでの緊密な連携強化にも合意。大統領は、国連安保理の非常任理事国の選挙において日本を支持する考えを伝えた。首相はスリランカの支持に感謝の意を表明し、これまで以上に緊密な二国間関係を築いていくことで合意した(現地メディア『Colombo Page』)。

【人権問題における国連・国際社会との足並み】
 ドイツメディア『ドイチェ・ヴェレ』(DW)のインタビューに対して、アナリストのAlan Keenan氏は、日本の政治的、経済的支援を必要とするスリランカにとって、今回の訪問が重要なものとなったと指摘している。

 内戦処理問題で、戦争犯罪、人権侵害について国連及び国際社会からの圧力が強まっている中、スリランカにとって日本の政治的支援は重要だと、Keenan氏は指摘する。スリランカとしては、今年3月に国連人権理事会から指摘された問題解決への進展を日本に理解してもらい、今後国連のさらなる圧力を防いでほしい考え、と同氏は見ている。

 日本は今まで、問題の具体的な進展を促すものの、直接に圧力をかけることはせず、中立の立場を保持してきた。問題についての進展を目指すというスリランカ政府のコメントを歓迎する姿勢を見せたが、今後も慎重な態度を維持するだろう、と各メディアは見ている。一方でKeenan氏はDWのインタビューで、日本が自国の目的を優先して人権問題を後回しにすることに批判が上がるだろう、と指摘した。

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Text by NewSphere 編集部