“サムライの帰還” 日本の右傾化を豪公共放送が報道

 第2次安倍政権誕生以来、日本の右傾化とナショナリズムに関するニュースが頻繁に見られるようになった。海外メディアから日本はどのように見えているのだろうか。

【新ナショナリズムの出現】
 アメリカのロヨラ大学客員教授で、東アジア経済の専門家、デニス・マコーナック氏は、ウェブ紙『ディプロマット』に寄せた記事で、日本の変化を説明する。

 同氏は、第二次大戦中、アジア各国で多くの人々が日本軍の犠牲となったことは、今も忘れられてはいないと述べ、戦後の日本は、平和主義を貫いている国と考えられているが、日本のナショナリズムを感じさせる行いは、常に非難されてきたと指摘する。

 ところが、北朝鮮の核の脅威や、中国の経済的、軍事的台頭で、多くの日本の団体は、自衛隊の役割の限界を問題にし始めた。これが、今までの「札束外交」から脱却する動きの前兆になりえる新しいナショナリズムを育て、日本の外交政策の選択肢についての、激しい議論に繋がったと同氏は分析する。

【やはり右傾化?】
 オーストラリアのABCの番組『Foreign Correspondent(外国特派員)』は、日本の右傾化をテーマに番組を制作。番組の内容をまとめた、「サムライの帰還:中国の脅威を前に平和憲法を手放す日本」と題する記事を掲載している。

 番組は、航空自衛隊の施設を取材し、中国機への緊急発進等による現場の緊張感の高まりを報じつつ、安倍政権下で防衛費が増額されたこと、近年防衛大学校の志願者が増加したことなども伝えている。

 また、日本国内での右翼グループの台頭や、侵略戦争を認めない田母神俊雄氏が、都知事選に出馬し、若い世代から多くの票を得たことも紹介し、ナショナリズムの高まりを示唆している。

【過去を受け入れたうえで】
 マコーナック氏は、ジョージ・オーウェルの『ナショナリスト覚書』の「ナショナリストは、自身の側によって犯した残虐行為を非としないだけでなく、それを聞きさえしないという驚くべき能力を持っている」という言葉を引用し、近隣諸国が、日本の変化を認めない理由は、「長い植民地支配の間、間違いを犯したと日本人が認めない」からだと指摘する。

 同氏は、日本の新ナショナリズムは、過去の出来事を良いことも悪いことも認識して受け入れ、未来における国際社会でのあり方にフォーカスすべきだとする。戦後の経済的成功や、他国との平和的共存など、日本には誇るべきことがたくさんある。これを続けることで、日本は地域と国際社会で尊敬されるリーダーになることができると、同氏は述べている(『ディプロマット』)。

Text by NewSphere 編集部