豪州との“歴史的復興”を成し遂げた安倍首相 豪訛りの演説も海外メディア高評価

 安倍晋三首相のオーストラリア訪問では、日豪の関係強化が両首脳の口から明言された。豪地元紙ではこの動きに対し賛否両論がみられ、中国は警戒感を示している。

 韓国を含むその他の海外紙は、日本の過去の歴史に遡り、それぞれの見方を伝えている。

【戦時中の行為への謝罪が不十分ではないか】
 オーストラリア訪問で、安倍首相は中国を名指しすることはなかった。しかし、全ての目的はその一点なのだ、と英エコノミスト誌は報じている。同首相は、オーストラリアにアジア太平洋地域の広大な海と空を「解放された自由な」場所として、日本と共に守ろうと求めた。

 同紙は首相が日豪の重要な時機と位置づけた訪問の中で、両国関係の歴史的復興を演じてみせた、と評している。

 1957年、安倍首相の祖父、岸信介氏は、戦後、首相として初めてオーストラリアを訪問し、日豪通商協定を結んだ。しかし、1942年のオーストラリアへの攻撃、戦時中の捕虜の粗末な扱いなどがその後数十年間も両国の関係に暗い影を落とし続けていた。

 同紙は、連邦議会で日本の首相として初めて演説を行ったその孫が、「謙虚」な態度で戦死者に「深い哀悼の意」を示したが、「凶悪で恐ろしい歴史」についての言及は、初めての弁解ではなく、戦時中の犯罪を完全に認めたたわけでもなく、明確な謝罪でもない、と報じている。

【謝罪に終わりは無く辛いものだ】
 ウェブ外交誌『ディプロマット』も安倍首相の祖父である岸氏とオーストラリアの関係に触れている。

 サンシャインコースト大学のドナ・ウィークス教授は、祖父の日豪関係に及ぼした功績の大きさに気付いた安倍首相にとって、個人的にも重要な訪問だっただろう、と同誌で述べている。

 また、首相の演説がオーストラリアの訛りを使った英語で行われたことに感銘を受けたという。内容もよく練られた建設的なものだった、と評価している。

 集団的自衛権行使容認については、日本のどの首相も、建前と本音で苦渋することになるとしている。中国と他国を見てもわかるように、戦争犯罪への謝罪はもう十分だということには決してならない。日本は、その歴史を過去のものにすることは絶対に許されない。安倍首相は、憲法の再解釈が軍国主義への道ではないと説明するのに苦労しているようだ、と同情的だ。

 しかし一方で、日本の集団的自衛権行使への手順には失望したという。もし、国民投票で方針を決定したのであれば、安倍首相は地域に対してより強い立場を示すことができただろう、とウィークス氏は意見している。

【中韓、豪政府関係者発言を嫌悪】
 朝鮮日報は、オーストラリアのトニー・アボット首相が、安倍首相との会談で「日本軍の行動に同意はしないが、任務を遂行する上で見せた名誉ある姿を尊敬している」と述べ、第2次世界大戦当時の日本軍を美化した、と報じている。また、ジュリー・ビショップ外相の、「中国は弱者を尊重しない。オーストラリアは中国に対抗し、平和と自由の価値を守る」との発言を取り上げるなど、批判的な内容だ。中国国営新華社通信も同様に発言を非難している。

 同紙は豪政府関係者によるこれら発言は、中国の膨張がオーストラリアの安全保障にとって脅威になるとの危機感があることが要因だ、としている。

 なお、アボット首相は、日豪の防衛協力について「両国の関係は、特定の国に敵対しようとするものではない」と説明している。

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Text by NewSphere 編集部